2015年10月22日木曜日

蜘蛛の糸

「ある朝目覚めてみると、ベッドの中の自分が巨大な虫になっているのに気がついた」
.....
と言うのはロシアの作家カフカの「変身」の有名な冒頭である。この小説の書き出しは川端康成の「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」くらいに、或いは漱石の「我が輩は猫である。名前はまだない」くらいに衝撃的で印象に残る最初の書き出しなんである。筆者は高校生の頃よく本を読んだ。主に古典から現代まで日本の作家だったけれど、頭のバランスを取るために洋の東西を問わず読まねばなるまいとう、妙な青臭い義務感があって読んだものである。ロシア文学もドストエフスキーから手を付けていったんであるが、何人か読んでいってすぐ挫折した。長くて難しくて暗いんである。いくつか読んだ中のひとつが先のカフカの「変身」なんであった。

のちにソルジェニーツィンの分厚い本を前にして、逡巡したあと伸ばした手を引っ込めた軟弱者である。代わりに高校3年だったか、それまで五木寛之に傾倒していたけれど、村上龍が処女作「限りなく透明に近いブルー」で芥川賞を取ったとたんに飛びついて読んだものだった。ロシア文学系はそれ以来手にしていない。今となってはカフカのそれもストーリーなどは全く忘却の彼方なんである。

さてさて。このところ少年野球ネタが落ち着き、ブログの更新も滞りがちであったけれど、しかし、ブログを書けなかったのは夜な夜なQueens10周年記念誌の仕事や、フレンズの年間スコアブック集計の2015年版フォーマットを作ったりしていたからなんである。更に溜まっていたTSUTAYAのDVDを観たり、昨日は仕事の打合のあと築地で23時まで客と飲んだりと、それなりに忙しかったのだった。

そこで昔のブログネタ倉庫の錆び付いた鍵をこじ開けて、奥をのぞき埃のかぶった抽き出しを開ければ、あったあった。これはいつか掲載しようと思い保管してあった秘蔵写真なんである。jpgデータをクリックして調べると今年の5月に撮ったものだった....。

「ある晩そろそろ寝ようかと思ったら、窓の外の暗闇から何者かがこちらを見ているのに気がついた」
..........安物のホラー映画みたいに。

スマホでは二本指で写真を拡大しないと分からないかもしれない。一瞬どきりとしちゃったんである。窓外の暗い夜空にぼんやりと浮かぶそれと邂逅した瞬間は、背中に冷や水をかけられた気分であった。
すぐにカメラを持ってきて撮った。暗くてよくわからんぞ。
フラッシュを焚いて撮影。まるでレントゲンのような写真だわい。妙な星座に見えなくもないか。
もう一度ピントを手前にして撮った。
そーなんである。結構デカイ蜘蛛がベランダに蜘蛛の巣を張っていたのだった。うちはマンション5階建ての5階。どうやってここまでスタコラ登ってきたのか、或いは風に乗ってスパイダーマンよろしく、ひゅるひゅる飛んできたのか。こんな高所に巣を張ってもあまり旨そうな虫などは飛んで来ないし、いったいコイツ何を考えているのか。
しかし彼には罪はない。むしろその健気な営巣の運動と幾何学模様の美しい蜘蛛の巣に見惚れてしまったんである。自然界の制作物は全て、世界にたったひとつだけのオリジナルデザインなのだ。
小さいイエグモとかならいざ知らず、こんだけ大きいヤツがやってきたのは初めてでビックリなんであった。写真で見るとまるで、外からゴルゴ13が窓ガラスに銃弾を撃ち込んだあとのヒビのように、綺麗な放射状の模様が浮かんでいた。その時の筆者はバスローブを着てブランデーグラスを片手に葉巻を吸っている悪徳社長の金持ちの気分だった。

しかし、このままここに居候されてもかなわない。ちょっと可哀想だったが、このままではどうにも寝覚めが悪いので、彼には階下へつつーーっと強制的に降りていただき、残ったガラスの芸術品も撤去しちゃったんである。
彼の更なる健闘と奮起を期待して、ちょっとヤツの身の安全を憂慮しつつ、やっとベッドに横になったわけであった。
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