2016年9月19日月曜日

南極シロクマ北極ペンギン

久々のスコアラーであり、お久しぶりのオレンジボール大会なんであった。
フレンズはここまで一勝一敗、今日の対戦はバーズと並び強豪と聞いている花の台フラワーズ。オレンジボール(3年生以下)大会は小さい子に野球の楽しさを体験してもらうことが最大の主旨。勝敗は二の次....と言ってもやはり勝ちたいわけである。打者走者が塁に出れば、初球から自動的に盗塁は当たり前田のクラッカーであり、盗塁成功率はほぼ90%以上だろうか。逆に守備面ではバッテリーが一番重要なのはAチームと同じだが、オレンジでは一塁手の送球をいかに取りこぼさず捕球出来るかが肝要になる。後逸すれば走者はじゃかすか溜まり、あっという間に失点しちゃうからである。打ちに打って勝ったり、鉄壁の守りで勝利したりという試合はそうそうないのがオレンジなんである。もしオレンジで6-4-3のダブルプレーなんか出ちゃったら、驚天動地、慇天動地、震地動天、震天動地、世の中を揺るがす大事件なんである。(※驚天動地の類語を一所懸命調べた)
もうひとつの特徴は、定位置で凡フライを捕っただけで親たちから大歓声が涌き起こり、ボテボテのゴロのヒットを打っただけで、割れんばかりの大拍手を浴びるのがオレンジなんであった。

先発はHF、Kitazawaくん、AFはKakeno監督の息子K.Kaito。両投手ともなかなかの良い速球を持っている。初回HFはクリーンアップに二本の安打が出て3点先制。
その裏AFも先頭Kenzohが三遊間の安打などで2点を返す展開。
※写真はiPhoneで撮った。アップで撮ったらピントも甘く粒子もザラザラ。
因に少年野球といえどもベンチに携帯やPCやカメラなどの電子機器を持ち込んではいけない。昨年の全国大会で嫌というほど思い知らされたわけで。(携帯は電源を切るだけではダメで持ち込みそのものが禁止されている)
このiPhoneの写真は筆者から別人格が幽体離脱してまるでドローンのように撮ったものであるからして、筆者にはなんら責任はないんである。

2回裏AFはKitazawaくんの力投の前に無安打ながら、1点をもぎ取り3:3の同点にす。AFの親たちはもう大騒ぎなんであった。
試合は終始小雨そぼ降る悪天候にて開催。
28番Nakamuraオヤジが子らに叫ぶ「もっと声を出せえ〜」
一番声を出しているのが親たちである。
更にNakamuraオヤジが子らに叫ぶ「もっと盛り上げろ〜」
一番盛り上がっているのが親たちである。

3回表HFは安打に加えて四球、失策に乗じて一挙4点と差を広げた。さすがは強豪である。7:3。その裏AFの攻撃が終わればタイムアップ、4点差で最後の攻撃を迎える。
先頭打者のHideakiがやってくれちゃったんである。ワンストライクからの二球目を強振すると打球は大きな放物線を描いて雨天を切り裂き、中堅手の頭上を越えてそのまま赤いコーンの向こうの五万の大観衆が待つスタンドへ突き刺さった。一矢報いる文句なしのホームラン。6年Aチームでもなかなかあそこまで飛ばせる打者は少ないはずだ。面目躍如、さすがスーパー3年生の異名を取るだけのことはある。
この本塁打で勢いに乗ったか、無安打であれよあれよと言う間に同点、一死満塁からWPにてサヨナラゲームとなった。HFは意気消沈、悔しがっていた。チカラはHFが上だったと思うのだが、ひとつ間違えばウチが同じ轍を踏む可能性だって大いにあった。
大逆転勝利に普段我が子の試合での姿を見れない親たちは大喜び、まるで県大会で優勝しちゃったような感動のゲームだったようだ。地球がひっくり返って南極をシロクマが闊歩し、北極にペンギンが群れるような状態だった。
と思えば勝ったのか負けたのか分からないまま、キョトンとしている子もいたりする。
これがオレンジなんである。
オレンジは毎年そうだけれど、それにしても親たちの応援はややもすると、Aの試合を凌駕して余りあるものがある。小さい子どもたちの一挙手一投足にきゅんきゅん、ぎゃんぎゃん、わんわん、ぎゃあぎゃあ。しかしこれがオレンジの楽しい一面でもあり、醍醐味でもあるんである。
久しぶりにベンチ席でスコアをつけて、鼓膜が破れるかと思った。
マラソン界には「心臓破りの坂」が存在するが、
オレンジ界には「鼓膜破りの席」というものが存在するんであった。


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2016年9月18日日曜日

QueensVSヤング

iPhoneで天気予報を見る時は「LINE」天気予報アプリを見る。登録した地域の詳細な予報が見れるということで、宮前区と渋谷区を設定で入れてあるが、いつもほとんど変わらない。当たり前か。
でもって明日からまた台風の影響で、まるで梅雨時のような予報。明日から(18日曜)一週間、雨マークなんである。

今日土曜は久々にQueensに行くことにした。鷺沼ヤングホークス5年生以下(来年の新チーム)との練習試合なんであった。今日を逃したら一週間雨の日々を過ごすことになるからでもある。
Qもヤングも連合がらみで欠員は否めないメンバー構成ではある。先発はQ、Honami、ヤングTamuraくん。どういうわけだろうか、歴代ヤング投手陣はここ何年もの間、眼鏡さんのピッチャーが多いように思うのは筆者だけだろうか。


ヤングベンチへももちろん挨拶に。大将Kurosuさんと29番Ishikura節が炸裂した。話しているとヤング、連盟審判のKatsuさんも帯状疱疹になったそうなんである。個人差はあるがあの痛みはかなりキツイ。
試合はQueensが先制点を挙げる展開に。Q監督のKoshimizuさんは新店舗オープンに向けて当分宮前には来れないんである。飲食店舗の設計をやっている筆者にはその開店準備の気苦労は分かる。その間29,28のImanishi、Kurashige両コーチが重責を担って熱心に指導にあたっていた。

試合は男子相手に奮闘。Akaneと新人Hasumiの放ったたった二本の安打はいずれも得点に結びつくタームリー、合計4得点。守備も思いのほかミスがなかった(全くないわけではないが)
対するヤングは8点で8:4のダブルスコア。

しばらく見ないうちにみんな上手くなっていた。今年は大会での結果が出てないだけで、確実に上達していたというのが筆者の印象である。たくさんいるけれど、あえて特筆するならば、Ayakaである。線が細く空振りばかりだったのが外野へ打ち返すバットスピードを備えて、守備も驚くほど上達したように思う。写真を撮ってみると去年と今との目ヂカラが違うのが分かるんである。そんな子が他にも何人もいたのだった。
フレンズでも幾度も経験しているが、「あの砂遊びしていた、あの子」が、ある時しゅっと成長を見せる瞬間がある。少年野球指導者のひとつの嬉しくなる瞬間でもある。



試合後の練習。QueensOB黄金時代のHinataとSunaが遊びに来ていた。ベンチに座ってイマドキの中学生らしくスマホをいじる。でもひとたびマウンドに立ちバッティングピッチャーをやれば、さすがである。

おじさんたちも負けちちゃあいられん。Yamaguchiコーチ、DaiちゃんRyohちゃん、審判のYamaderaさんら走者を買って出る。

余談ではある。
Yurikoの最大の武器はモデルや女優を凌駕する「めっちゃ可愛い笑顔」である。オジサンたちはこの白い歯を見せられるとメロメロになってしまうんであった。しかし、打撃のその瞬間もこの最大の武器を発動しているとは思わなかった。もちろん笑ってバットを振っているわけではないだろうけれどね。(^-^)(写真は拡大すればわかる)


※さて明日からは雨。
小説「月に雨降る」は今原稿用紙で164枚まで来た。短編と長編小説の中間くらいであろうか。全くその気がなかったド素人が紆余曲折、右往左往、迷走飛行、勢いで書き始めたのだったが、大きな転換点にさしかかってきたんであった。
もう少し続けようかと思う。
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2016年9月14日水曜日

小説「月に雨降る」23

この年の元日は2000年ミレニアム問題から始まり、間もなくサザンの「TSUNAMI」が歴史的な大ヒットを記録し、夏にはシドニーオリンピックが開催された。百年ぶりの新世紀を迎えて世界中がどこか浮かれているように思えた。分厚いダッフルコートを脱ぎ捨てて、いきなり春の陽光のもとに躍り出たような気分だった。
龍一は世の中のうねりに流されながらも、毎日希伊が突然いなくなったことで空虚な日々を過ごしていた。会社での仕事に没頭しているうちは良かったが、中野坂上のアパートに帰り着くまでのあいだの夜道では、月面を歩く宇宙飛行士のように足が地に着いた気がしなかった。
しかし家に帰るとそこにはサチコが待っていた。犬のようにドアを開けるとしっぽを振って真っ先に玄関まで駆け寄ってくることはないのだが、帰宅した龍一を見るとみゃあと鳴き、ソファから飛び降りると前脚を思いきり伸ばし、尻をうしろに持ち上げて伸びをする。ついでにソファの腰の部分でばりばり爪研ぎをしたのちに、とことこ駆け寄りしっぽを龍一の脚に朝顔のツルのように巻きつけてご飯をねだるのだった。
「ごめんごめん、腹減ったよな」
と言いながら着替えもせずに缶詰を開けて皿にカポンと落とすと、サチコは一心不乱にぴちゃぴちゃと音を立てて時間をかけて平らげる。そのあとは口の周りを小さなピンク色の舌で何度も丹念に舐めたあとは、またソファに上がり龍一を一瞥しそっけなく丸くなってしまうのだった。そんなサチコが唯一心のネジを緩ませてくれる存在だった。人間に媚びないマイペースの猫の性癖ではあったけれど、夜寝る時は違った。龍一は必ずベッドに入る前にサチコを抱き上げて一緒に寝た。サチコは布団に入るととたんにグルグルと喉を鳴らしながら、自分の寝場所を何周も回りながら確認しとっぷりと横になる。大抵は龍一の腕と胸の間のわずかな空間だったが、時には腹の上に乗って寝始めることもある。龍一にはその小さな命の重みが心地よかった。たまに酔った日にサチコを忘れてベッドに潜り込むと、彼女は自分から龍一の上に飛び乗り、布団の隙間から中へ侵入して同じ作業を繰り返して寝るのだった。そんなサチコと暮らしているうちに、この子は希伊の生まれ変わりか、或いは希伊と入れ違いにやってきた、自分にとってかけがえのない命だと思うようになった。
サチコとの生活は楽しかったが、彼女を見ているとやはり希伊のことに思いが及ぶのだった。あの雨の日曜から二週間ほど経った頃、あのじいさんにもう一度会ってサチコのことを報告しようと思い立った。いや報告しなければいけないと思った。同じ日曜の朝早くに同じ場所で待っていれば、弁当工場へ行くじいさんに会えると考え、苦手な早起きをしてサチコを腕に抱いて連れて行ってみたのだが、しかしかなり待っても会えなかった。
龍一は気を取り直し、このまま朝の散歩にでも出かけようかという気になったが、まだ幼い子猫を抱えたままでは遠くまでは行けまいと思った。近くの公園までならばいいかと考えて、アパートから5分ほどの住宅に囲まれた小さな公園へ行くことにした。
予想どおり日曜朝早くの公園には誰もいなかった。そこは希伊とよく行ったことのある公園で、6個ほどあるベンチの中でも大きな楠(くすのき)の下にあるベンチが二人のお気に入りだった。そのベンチに座りサチコをそっと降ろしてみると、大きな目をこれ以上開けたら目玉が飛び出すのではと心配になるくらいに見開き、ゆっくりとベンチの匂いをかいで回った。しばらくするとベンチの上から下の地面を覗き込み、まるで針金で出来たアンテナのようにしっぽをぴんと立ててジャンプしようとするのだが、たっぷり逡巡したのち諦めて座り込んだ。まだ子猫のサチコにとってその行為は、テキサスの断崖絶壁から干からびた川へ飛び降りる行為に等しかったに違いなかった。彼女にとってはあの日以来初めての外出だった。龍一はこの子猫に思いを馳せた。どんな親猫たちの間に生まれた子なのか。いつどこで生まれたのだろう。それがどうやって人の手に渡り、そしてその人はどういう理由でこの子を捨てたのか。次第にその思考は希伊が話してくれた彼女の出自とだぶって見えてきた。希伊は自分という存在が曖昧模糊として己の確認が出来ないのに、人と結婚するなどは出来ない、というような事を言っていた。龍一は自問自答してみた。でもだからと言っていきなり家を出て失踪することはないじゃないか。仮に目の前に希伊がいるのなら、そんなことは自分は全く気にしていないと言いたかった。それでも希伊が納得しないのなら、これから二人でその確認作業を一生かけてやろうと。でも希伊の一度言い出したら曲げないという一途な性格も知っている。
「ん?知っている?」
俺は希伊の何を知っているというのだろう。彼女の顔、姿、形、体のどこにどんなほくろがあるか。声、癖、仕草、性格。優しさと厳しさ。勤勉と怠慢。それらのことは数年間の暮らしの中で熟知しているけれど、それで全てを知ったことになるのだろうか。逆に言えばそれ以外のことは何もまだ知らないのだ。俺は知ったつもりになっていて、本当はまだ何も知ってはいないということに気づかされた。龍一はすでに失ってしまった希伊のことを改めてもっと知りたいという欲望に駆られた。

そのためには希伊を探すしかない。
サチコを連れて家に帰り、土曜の晩から日曜までのあの日の記憶を懸命に思い出そうとした。日曜起床した時の記憶がそこにある。ベッド脇にある目覚まし時計などを置くための小さなテーブルに希伊の書き置きがあった。その紙片は手のひらサイズほどの薄いメモ帳の切れ端で、まだ机の引き出しにしまってある。小さく折り畳んで誰かにもらったモンブランの万年筆の空き箱にそっと保管していたのだった。もう一度それを取り出してみた。
『リュウ、ほんとうにごめんね。いつかまたその日がきたら逢いたいよ』
龍一はその文章を3回繰り返して読んだ。希伊は達筆とは言えないまでも素直で奇麗な字を書いたが、鉛筆を強く握る癖があり筆圧が強かったので、その字面はとても濃く毅然と何かを訴えているようだった。
じっと見ているとその紙面全体に目に見えないような細かい凹凸(おうとつ)があるように思えたが、そのことにこの時の龍一は気がつかなかった。龍一はその書き置きに何か妙な違和感を覚えながらも、また元通り紙を折り畳んでケースにしまった。

龍一は希伊の実家の永山家を訪ねることを決心した。

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