2017年1月26日木曜日

小説「月に雨降る」34

富山に車で来ていた黒坂は、滑川から国道8号線と併行している北陸道を走り金沢東インターで降りた。郷土資料館や図書館へ立ち寄り、市役所や東京の仕事仲間など何本か電話をかけた。希伊の実の父母、氷室家の墓所を調べるためだった。滋賀に住む旧知の友人にも訊いてみた。通称トミケン、冨沢健司郎という男だった。彼は黒坂の三歳下の後輩で以前金沢にある会社に勤務していたことがあり、転勤で実家のある滋賀へ戻ったのだった。彼の話によると金沢市営の野田山墓地には、いくつか無縁仏の墓もあるとのことだった。それだけでは深夜の山奥で一軒家の灯を探すようなもので心もとなかったが、黒坂はとにかく行ってみることにした。型落ちのボルボステーションワゴンに乗り込みキーを回した。
そこは歴史の重みを感じるかなり古い墓地だった。管理所に行き「氷室」姓の墓はあるかと訊ねた。人の良さそうな中年の女の管理人が案内してくれた。裏ぶれた卒塔婆(そとば)の先にあったのは立派な墓石ではなく、角のとれた四角い石が佇立(ちょりつ)していたのだった。微かに「氷室家」とかろうじて読めるものだった。親類縁者がなくいつの頃からか供養する者がいなくなったため無縁仏となったのだろう。確信はなかったがこれが希伊が赤ん坊の時に死に別れた両親のものに違いないと思った。手を合わせる黒坂の背後から管理人がにこにこ話しかけた。
「どうしてここが氷室さんのものだとすぐに分かったか言うとですね、ここ数ヶ月、毎月決まった日に、小柄できれいなお嬢さんがここへやって来て手を合わす姿を見ていたんねんて。気になって声を掛けたらこちらの娘さんだとのことやったがやね。その時に娘さんが言ったんねんて。『どうかこれはこのままにしておいて下さい。私は今お金がないですが、いつかきっとちゃんとしたお墓を建てますので』って。真っすぐな目をした人で、ここらの訛りはなく標準語を話しててんて。それで印象に残っていたんねんて。意志の強そうなそれでいて可愛らしい女性でしたよ」
黒坂が探偵事務所で初めて希伊と会った時の初見と同じ印象だった。間違いない、希伊だった。黒坂は帰京したら自由が丘の永山家を訊ねようと思った。どうして今希伊が金沢にいるのか、個人的な興味と職業的な探究心からだった。

東京へ戻った黒坂は、当時希伊から調査依頼された資料をキャビネットの奥から引っ張り出し、数年ぶりでもう一度熟読した。永山剛の名前でネット検索すると外食産業を中心に幅広く事業展開する大企業の社長だった。そのことはもちろん当時も調べて知ってはいたが、希伊から依頼された当時から更に企業規模は拡大していた。週明けに奥沢にある永山の家を訪問した。インターホンで探偵事務所の者だということを告げると、家政婦に案内されて中へ通された。平日だったせいか主人の永山剛はおらず妻の永山奈津子が応対した。怜悧な面立ちにどこか暗い陰のある女だった。調査は済んでいたが会って話すのは初めてだった。娘さんからその生い立ちの調査を依頼されたこと、全てはすでに報告済みであること、従って自分は全てを知っていることなどを率直かつ手短に告げた。そしてこの訪問は仕事ではなく飽くまで個人的なものだということもつけ加えた。そこまで話したところで奈津子がやっと口を開いた。
「そういうことですか」
どういうことだ。黒坂は瞬時に「そういうこと」のふたつの意味を考えた。話を聞き終わって理解したという意味合いと、もうひとつには暗いニュアンスが含まれているように思えた。奈津子の次のひと言でそれが後者を意味するものと分かった。
「で、おいくら欲しいの」
金持ちの家の秘密をネタに強請(ゆす)りに来たしがない探偵と彼女の目には映ったらしい。儲からない商売だが俺はそこまで落ちぶれてはいない。あるいは世の中は全て何でも金で解決出来るという魔法を信じているような表情だった。
「誤解しないでいただきたい。私はまだ人としての矜持(きょうじ)は持っているつもりです。生きていくためには金が必要です。しかも出来れば今よりももっと多くの金があればとても素敵なことだ。それは否定しません。しかしそのために、金を得る代わりにハートを売るつもりは全くありませんので」
奈津子はそれでも表情は変わらなかった。金沢で希伊の消息を掴んだことは伏せておこうと判断した。長年の探偵業で、こんな時の知り得た情報の出し入れには慣れていた。個人的に希伊に会わせて欲しいという本来の意図を改めて言ったが、奈津子の硬い表情は変わらなかった。二十歳のころ家を出て一度だけ顔を見せたがそれきりだ。消息は知らぬ。細部の事情まで知っていて要求するものがないのなら、もう帰ってくれと言われた。辞去しようと立ち上がった時に、奈津子が「あっ」と小さく声を漏らした。
「あなた、まるであの男みたいだわね」

以前希伊と同棲していた若い男がここへ押し掛けてきたと言った。その男の名前は分かるかと訊ねると、奈津子は別室へ行って一枚の名刺を持って来た。黒坂は職業柄本能的にそれを手帳に書き留めた。その名刺には『T&D神島龍一』と印刷されていたのだった。

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2017年1月25日水曜日

Queens卒部式Part2

※前回は(昨日)大変失礼しちゃったんである。志半ばで挫折し、連夜のブログ執筆となった。今日はだいぶ風邪将軍も鳴りをひそめており、そろそろ近日中に退却してくれるであろう。というわけで、QのPart2なんである。

前半の2016卒部生を送る会に続き、後半は2017年今季の新メンバー紹介である。ところが監督Koshimizuさんが風邪のため早退しちゃったのであった。勢い、29番を背負うOB、Noeri父、Satohコーチが選手紹介。Sさんは人の話をじっと黙って聞いていると、そこに停滞や壁にぶつかった時などのタイミングで、全く別の切り口から突破口を切り開く絶妙な思考発言をする人材なんである。目の付けどころがシャープなんである。

まずは主将を除き6年の3人、Hinata,Akane,Sachiko。


順々と抱負を述べるQ戦士たち。3年生の番になった。もじもじしちゃってついに泣き出すHina。そこがまた可愛い。そこへ最後のHarukaも加わると逆にケラケラコロコロと大笑いしながらマイクを持つ天然キャラの明るい子。ついに泣いていたHinaもつられて笑い出す。なんか良いシーンであった。会場も一転爆笑、幸せな空気に包まれる。

オオトリは主将Ayaka。昨年の新人戦ヤングでも投手として好投し優勝に貢献したことは記憶に新しい。最後の年、Qの柱としてチームを引っ張ってほしいぞよ。

現役母から6年母へ、花束贈呈。今年新たにお目見えしたコーナー企画。とても良いこと。Queensならではのシーンだった。現役母会会長Kurashigeさんの音頭で。

卒部生からQスタッフたちへ感謝の贈り物。ちなみにこの会全体企画は母会会長が仕切るのがQなんである。Imanishi母会長、本当にお疲れさまでした。
たまたま筆者の番では、すぐ横にFuuko父がいたのでカメラを下さいと言われて預けたので、筆者も写ることに。早退、欠席のスタッフその他多数。
おっと、書き忘れるとこだった。ちなみに6年3人は、AyanoとHonamiは中学ソフト、Mikuは中学部活の男子に混じって野球部に行くかもしれないとのこと。(思案中)宮前区内中学のそれぞれの事情があって、男子の野球部に行く子もいることを初めて知った。


子どもたちがいるので夜20時ころ(?)閉会。延々1時半からであった。最後に人のトンネルを作って6年家庭を送り出す例のアレなんである。
まずは実験台としてOB,Fuukoが先頭打者で。


中学OBたちはロビーでヘン顔の自撮りに夢中。

卒部生がQの応援旗の裏に書き込むのも毎年恒例。

では最後に集合写真を。まずは女子のみで。

次にこれに加えて昔女子だった女子も加えて。新旧入り乱れて大女子会となる。(ひとり例外は大昔男子だったデカイ男子がいるがこれは愛嬌というもの)

最後に残った野郎どもも含めて全員で。監督やDaiちゃんが欠けているのが残念だが致し方無し。こうして2016Q卒部式は幕を閉じたのだった。

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2017年1月24日火曜日

Queens卒部式Part1

2016年度宮前Queens卒部式なんである。記念すべき十周年の第十期生は主将AyanoとMiku、Honamiの三人娘たち。
※しつこいようだけれど、以下、卒部生入場や、来賓挨拶や、今季選手挨拶など全て写真に収めたんだけれど、割愛しちゃってまする。申し訳ないでござる。

筆者風邪っぴきゆえ酒もそこそこに各テーブルを巡回す。

腹が減った時にスーパーへ買い物に行くとついついいろんな余計なものまで買ってしまうことってよくある話で。その逆もまた真なり(ちょっと違いけどね)、会場に到着すると母たち手作りカレーが待っていたんであった。まるで結婚式のウェルカムドリンクのように。ちょっぴり空腹を覚えていた筆者、大喜びでご相伴にあずかるわけでプチ満腹。ところがこのあとこれが災いして、せっかくテーブルに所狭しと並べられた食べ物になかなか食指が伸びないのであった。せっかくだったのにゴメンナサイ。

3姫たちへ代表、監督、ベンチスタッフから記念品贈呈。

いよいよ満を持してのDVDの上映である。Mochida総合コーチが編み出した手練手管の妙技、ちっちゃい頃の写真が登場すると目尻が下がる人、逆に目尻に涙を溜める人。筆者例によって暗闇の中で文字通り暗躍しシャッターを切る。


涙に追い打ちをかけるように、続いては照明を落として親子でのスピーチ。
Ayano。

Miku。

最後はHonami。

.................
ブログ途中で突然ではございますが、なんとか最後まで完遂しようと決心し筆を執ったものの、やはりまだ風邪の野郎が若干居座っており、頭が回転せず入力ミスも連発、ゆえにやむなく断念。これは決して年のせいではなく風邪によるものだと自分に言い聞かせて筆を置かせていただきたく候。

PART2はまた次回。ごめんなさいまし。かしこ。
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