2022年10月23日日曜日

「俺たちの旅」山形北帰行

 「晴耕雨読」ヘビロテユーザーならご存知か、筆者は6人の姉兄弟でそのうち一人の兄は、日本での仕事を辞めて10数年前にマレーシアへ移住した。ところがコロナ禍でいろいろ思う所あって今年正式に帰国し宇都宮に居を構えた。もう一人の兄は大学時代に単身日本を飛び出し、現在パリ在住。大学2年の時に片道チケットでイギリスへ行き、ヨーロッパ各地を彷徨したのち今のパリで旅行代理店の職について以来、ずっとパリで暮らし今に至る。五木寛之の「青年は荒野を目指す」を地で行くような話である。その兄は70歳手前だからもう50年前の話。現在は退職しパリで年金生活である。今回彼が相当久しぶりに一時帰国したので、せっかくだから郷里の山形で兄弟会をやろーじゃないのよ的に参集したんである。長兄は一昨年ガンで亡くなったのでその他の5名+奥さん1名(義姉)での姉兄弟会となった。

どーせならチョー久しぶりに蔵王温泉に行こうとなって、筆者が毎度ながら宿などの手配やタイムスケジュールを担当することに。宿は中級クラスの温泉旅館にして、翌日は近くの沼へ行くことに。本当は蔵王のお釜やロープウェイからの紅葉を計画したのだが、脚が悪い姉がいるので断念し、近場での紅葉散策となったんである。沼の名前は「シギの谷地沼」。GoogleMapで見るとこんな感じ。

GoogleMapにはこの地域のネット投稿写真というのがあって、それを見ると紅葉が深まるとこんな感じであるらしい。

この辺は蔵王山の中腹で、まだ紅葉ピークにはもう少し間があったが、蔵王山頂を見上げるとかなり色づいていた。山頂へ上るロープウェイは途中から雲の中に飲み込まれていた。ロープウェイに乗り込み、紅葉を見下ろしつつ雲の中へ突入したらさぞかし面白かったに違いない。

宿は全館もちろん禁煙だったが、1階にある喫煙室が実に素敵だった。宿のHPでこれを見てここに決めたのは正解だった。因みに今ニュースになってる「全国旅行支援」は開始前の予約で、しかも人気の山形はあっという間に16億円の上限予算に達したらしく、その恩恵には与(あずか)れなかった。昨晩部屋で楽しく酒盛りをしたが、姉兄弟たちはそれぞれに苦悩を抱えていた。

街へ降りて昼食を摂って解散だったが、筆者だけはもう一泊しちゃったんである。そう、山形中学プチ同級会なんである。クラスは40名いたが、LINEグループで繋がっているのは今は16名ほど。そのうち8名参加、場所は前回同様Ayaちゃんの店「ルーブ」。因みに中学当時は男は男をあだ名や名前で呼んだけれど、女には全て苗字で呼び捨てだった。今は違うわけで。

何人もの懐かしい面々が揃った。男は会社経営者2名、山形県庁跡の「文翔館」館長、そして元地銀取締役だったNaoto。彼とはずっと友達付き合いが長く、筆者の東京での結婚式にも来てくれた仲である。大人になってからも東京で何度か飲んだりしたものだった。彼の臆面もなく言い放つストレートな下ネタは、あまりにも豪快すぎて一点の曇りもなくヤラシさのカケラもない。従って女子も全く眉を顰めることなく笑って受け流すんである。筆者にはない、周りを取り込む処世術は彼一流のものだろう。密かに尊敬の念すら抱いている私なんである。Naotoがカラオケで選んだ曲は中村雅俊の「俺たちの旅」。俺たちが高校生だった頃の歌、不安と期待の交差する、皆東京へ行く直前のドラマだった。

久しぶりの酒と会話に酔いしれた楽しい夜だった。同窓会アルアルではあるが、来てない同級生の今の消息などで盛り上がれば、逆に悲しく寂しい話も散見される。皆この歳にもなれば楽しい人生だけではなく、悲喜こもごもそれなりの時間を背負って生きているのだった。それは昨日の深夜まで飲んだ兄弟会での話題でもそうだった。病気や離婚、死別など大きな負の記憶を胸に抱えて人は歳を重ねてゆく。今も同時進行で闘病の不安を抱えて夜を迎える筆者のある友人もいる。その胸中を察すれば如何ばかりか。胸が締め付けられる思い。筆者も含めて同級生の顔に刻まれた皺は、これまでの経験値と記憶の数と同じだ。笑顔と苦悩を足し算した数が皺の数となる。一見豪放磊落(ごうほうらいらく)なNaotoとて例外ではないのだろう。

話は湿っぽくなったけれど、プチ同窓会は実に素敵で楽しかった。女子3人が持ち寄った手作り料理はお世辞抜きでベラボーに旨く、店に出せるプロのレベルだったし、Ji君やNoriちゃんの差し入れのお菓子なども最高だった。Ayaちゃんからはお土産までもらったんである。山形ワインと上山饅頭。

二次会は数人で近くのピアノバーへ。ここのママは昔銀座の店で歌を歌っていた本格派である。筆者のリクエストは竹内まりやの「駅」。この無茶振りにも楽譜を読みながら演奏し歌を歌ってくれた。歌ったことがなかったようで、音符を探り探りだったけれど、素敵なシーンだった。「見覚えのあ〜ある、レインコート〜、黄昏の駅で胸が震えた〜」彼女も偶然俺たちと同い年だったが、その歌声は30代にも負けない美声だった。

翌日は午前中駅前ホテルの周囲を徘徊し、市民会館の公園に立ち寄ったらこんな碑が建っていた「街に緑を窓辺に花を」...実に素敵なフレーズではないか。新幹線に乗り込む前にQueensの姫たちへのお土産に東北限定「さくらんぼポッキー」を二箱。さらに昨晩店で出た山形の漬物「小茄子」を駅から少し離れた「紅の館」だったかな?野菜売り場で購入。山形の「小茄子」は食べた瞬間、脳みそが溶けちゃうほど美味いのである。他にも駅ビルで「おみ漬け」やラーメンなど購入。いつも帰郷の時はほとんど1品くらいしか買わないのだが、今回はどーにも郷愁が身にまとわりついて、ついたくさん買ってしまったのだった。写真の他にもずんだ餅やラ・フランス菓子なんかも。

「俺たちの旅」山形北帰行はもうおしまい。帰路の車中の人となって頬張ったのは全国的にもそこそこ有名な「三昧牛肉どまん中」醤油と味噌味は絶品だったが塩味はイマイチ...というより旨くなかった。二つのアタリと一つのハズレ。これもまた人生そのものだ。アタリばかりの人生なんて逆につまらないではないか。2勝1敗。勝つだけではなく負けてこそ人は成長するものだ。

...なんて自分に言い聞かせる俺。俺の人生の戦績はどーか?振り返れば...1勝2敗だろうか。

「俺たちの旅」はまだ終わらない。けれど、そろそろ終着駅に近づいてきた。いつ到着するのかは誰にも分からない。

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