大晦日である。ギリギリ今年最後のブログを書く時間ができた。今年を振り返って。
2022年の最大の衝撃はロシアのウクライナ侵攻である。当初は3日で首都キーウ(当時はまだキエフという表記が多かった)が陥落するとの見方がメディアの大勢を占めていたが、ところがウクライナの想定外の粘りと反撃に、ロシアもたじたじ、現在もまだ終結終戦に至ってない状況は万人の知るところである。初期の頃の国外への避難路を幼い男の子が泣きじゃくりながら歩く姿や、地下に閉じ込められた女の子がやはり涙を流しながら取材に応じる映像は、今見ても胸が締めつけられる思いだ。反してロシア、プーチンの自分だけの論理で殺戮を繰り返す精神構造は尋常ではない。こちらから見れば侵攻の理由は「理不尽と不条理」の塊だが、彼らにしてみればそれが正義であり何の罪もない人の命を奪う大義名分となる。だから余計に収拾がつかなくなり、己の思い込みで自分に都合の良い利益と権益だけ主張し、他者に耳を貸さなくなる。そんなふうに思うのは筆者だけだろうか。私がロシア人でこんなことを書いたら、当局に拘束され即死刑に違いない。いつの日か何がしかの終結をみたとしても、ウクライナには拭い難い怨念が全国民に奥深く根付くはずだ。そしてまた歴史は繰り返す...。この「戦争の負のループ」はこの戦争に限ったことではなく、遥か古(いにしえ)の昔から続く構造なんである。
もう一つの2022年は、まだ興奮冷めやらぬサッカーW杯カタール大会。日本サッカーに世界から驚嘆と賛辞がいまだに止まない訳で。ただこれは自分が日本人だから、日本に耳障りの良い情報だけを享受する環境にあるせいもあるだろう。筆者も今大会の森保ジャパンには感動と興奮をもらったが、広く見ればカタール大会は素晴らしい試合が多く、特に日本のみならずジャイキリ(ジャイアントキリング=大番狂わせ)がいくつも存在し、特にモロッコは大いに賞賛されるべきである。日本の誰かが(解説本田か主将吉田?)言っていたけれど、「サッカーはサッカーが上手いチームが勝つとは限らない。相手よりサッカーが上手くないチームには別の勝つ方法がある」と。多くのスポーツにおいて(特に相手と接触する競技)体格が大きい方が小さいよりは優位には違いないけれど、後者は決してそれで負けるわけではない。少年野球にも通ずるものがあると思う。何はともあれW杯は面白かった。19試合を観たけれど決勝が終わった時のW杯ロス、喪失感はあったものの、内心これで、夜中に起きて観て寝不足に陥る生活から解放されるある種の安堵感も胸に共存していたのだった。ちなみにこのブログ、理不尽な脅威からいろんなことを守るために、11月中旬から一ヶ月一時的に休止にしたけれど、失意と傷心と怒りのどん底だった。その間このW杯の熱狂と仕事に己を埋没させることが唯一の心の救いだったことを記しておきたい。
さて最後は映画である。今年は昨年に比べて本数はかなり減ったものの、合計約63本を観た。内訳はTSUTAYAディスカス(レンタルDVD、 Blu-ray映画)が36本、Amazon Prime(プライム会員なので無料)33本、AppleTV+(サブスク)8本なんである。特筆は唯一劇場ロードショウで観た「トップガン・マーベリック」。センター北を歩いていて突然「観るには今日しかない!」と自分に言い聞かせて衝動的に映画館へ飛び込んだ。シネコンのスクリーンが小さかったのが残念だが、あの迫力はTVやDVDでは味わえない、銀幕で観るべき映画である。60歳近いトムクルーズや素人の俳優が米海軍全面協力で猛特訓し、本物の戦闘機に乗って操縦し映像を撮る手法はそれだけで奇跡である。機内のカメラは9Gに耐えうるために特注されたSONYのカメラ。「追いトップガン」という言葉も生まれたほど、全国で繰り返し何度も劇場に通って観たファンも話題になった。筆者はロードショウの他はAmazon primeVideoで解禁後すぐ観て、TSUTAYAからも借りて観たので3回のみ。しかしこの年末にAmazonで Blu-rayディスクを購入し、正月にもう一度観賞予定。ロードショウは「ブレードランナー2049」以来だけど、やはり実に良い。CGではない実写の迫力がそこにはある。プロ野球ニュースで試合を観るのと、反して球場へ足を運んで観戦するのに似ている(気がする)。コロナ禍で劇場公開が何度も延期になったが、どうしてもトムは観客には劇場で観て欲しいとの思いから、コロナを経て2年越しで今年の公開になったことは大正解だったに違いない。
このほかにAppleTV+(プラス)というのがある。ネトフリと同じサブスクだけれど、筆者はMacユーザーなのでこのAppleTVなんである。もう一体全体どーしちゃったのよ?!と言うくらいに映画を凌駕するクオリティーの高さ。質的にもそーだけれど4K映像なので俄然美しすぎる。今年観たAppleオリジナル連続ドラマは「フォーオールマンカインド」と「SEE暗闇の世界」。前者はもしベトナム冷戦後アポロ月面着陸計画が米国の勝利ではなく、ソ連が先に月面へ行っていたなら?....と言う設定から始まる。当時の風俗、1970年代ファッションやアメ車がこれでもかと言うほど出てくる。さらに「もし?」がいくつも出てくる。ケネディーは暗殺されず、ジョンレノンも生きていてビートルズ活動が継続される。これがまたリアルで昔の実写と今のCGで見事に合体され映像化。宇宙開発にソ連に先をこされた米国が躍起となって宇宙へ向かう様々な人間模様。同性愛などジェンダー問題も取り入れて時流に乗った展開に。最後は火星着陸まで話は及び、やっと米国がロシアより先に火星着陸となるのだが、その過程でロシアとの友情や協力があっての成功だった。これは2021年に製作されたドラマであった。もし今年の2月だったならウクライナ情勢でストーリーは全然違った展開になったはずだ。
もう一つのAppleTV+、「SEE暗闇の世界」(ネタバレ御免)。未来の地球、核戦争を経て(だったかな?)視覚を失った人類、目が見えない人々が集落や部族を作り互いに共生しまた争いながら世界を彷徨う。その中にまれに目が見える人もいるのだが、その彼らとの共存や共闘、共生を描いた秀作。圧倒的存在感のジェイソン・モモア主演、筆者の好きな「ブレードランナー2049」にも出演した俳優二人も出ており、実に面白いドラマであった。「面白い」と言う言葉の中には映像美の存在も内包される。ブレラン2049の女王シルビア・フークスの鬼気迫る演技は圧巻であった。ラストは世界中の視覚を持つ者が集まり平和のための様々な研究を行う場所に行き着くのだが、最後の引きの映像はニューヨークマンハッタン....。まるで「猿の惑星」のラストシーンの逆バージョンであった。
映画って良いものですね。それではまた来年、サイナラ、サイナラ、サイナラ。淀川長治的「晴耕雨読」は2022年最後のブログ。
みなさま、この一年ご覧いただき誠にありがとうございました。11月はいっそ全てここで吐露したいくらいの激情と焦燥に駆られましたが、そこは大人の所作、滅私奉公、己を殺し我慢することで守られるものがある。周囲の何人もの真っ当なオトナな方々にも助けられた。それを信じて今年の「晴耕雨読」の筆を置きたいと思う、大晦日の今日この頃なんであった。
2022年、ありがとうございました。
2023年もよろしくお願い致します。
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