2016年10月22日土曜日

やっちゃえオッサン

少年野球BLOG本文へ入る前に、なにくれと言い訳がましく悪く言えば駄文、良く言えば序文を書いてしまうのは、あたかも高見盛が顔をパンパンやってから本番取り組みに入るように、いわばルーティンワークとなった感のある少年野球「晴耕雨読」BLOGなんである。
昨日土曜に蒲田で現場打合があり、その流れで大田区の小料理屋で友人と呑み会になった。
急ぎの仕事であった。
更に呑んでる途中別のクライアントから電話があって、南青山のスポーツジムの案件が舞い込む。
こりゃまた急ぎの仕事であった。
週明けの月曜には茅ヶ崎の新築ビルの案件の打合で、18:00から目黒区へ行かなきゃなんであった。
これは長丁場の仕事であった。
その間これからQueensの仕事がふたつあり、フレンズに至ってはいよいよ成績表冊子制作と写真収集まとめの作業の季節到来なんである。

これだけ言い訳をするとなぜだかココロの底がほっくり安心するのはどうしてだろう。
と同時にこれだけ言い訳をするとなぜだか自分が狭量な男に思えてくるのはどうしたものだろう。

てなわけで、今日土曜日は多摩川瀬田ドームで行われる川少連秋季大会ジュニアの部の決勝戦取材に行くつもりであったが仕事となって叶わず。高津区VS宮前区クラブJr。しかしフレンズから頼もしい特派員記者が観戦に行ったのであった。スコアラー部長Ohmoriオヤジであった。

彼からまずはLINEにて第一報が入る。
「2裏Soraの弟Ryuの右中間を破るタイムリーでクラブJr1点先制!」
第二の報告。
「3表高津に一点返され同点」
しかしなんである。そのあと、
「その裏クラブJrが3点加点し4:1」
おお、さすがは宮前、このまま「やっちゃえニッサン」じゃない「やっちゃえオッサン」じゃない「やっちゃえミヤマエ」なのだった。
......しばらくLINEが鳴りをひそめたと思ったら、最後にOhmoriオヤジから来た。
「宮前クラブJr優勝!!!!!」
送られてきた画像を見て驚いた。
なんと最終5回表に高津区が追いついて5:5から、その裏クラブJrが劇的サヨナラゲームとしたのであった。高津区もアッパレ、更に宮前もアッパレな激戦の試合だったようだ。

これを筆者がフレンズLINEにアップすると、矢継ぎ早に「おめでとう」の祝福の言葉やスタンプの嵐がぐわんぐわん吹き荒れる。ほどなくして連盟連絡網にも事務局Satohさんからメールが来た。遠方よりNishimura事務局からも祝福のリプライ。
Shohma母Tomoちゃんから写真がアップされた。フレンズ監督、連合クラブJrの29番コーチの重責を果たしたItoh、そしてShohma、Kunji、Takashiお疲れさん、おめでとうなんである。

連合監督のHirataさんが一番ほっとしたに違いない。なぜなら、彼は.....
「もし優勝出来なかったら頭を丸めるとまで言い切ったんである。
....更にもし出来なかったら渋谷のスクランブルを逆立ちして渡り、全裸で国会議事堂の周りを一周し、そのまま東京スカイツリーからパラシュート無しで飛び降りて、最後に豊洲市場の地下空洞の水を一人でかき出してみせるとまで宣言しちゃったんである」
これに加えて今思い出した。
「ついでに2020年東京オリパラ海の森ボート会場を自腹で改築工事をし、更に自分の給料を半減しちゃう」と言った公約を実行せずに済んだからである。

改めて優勝おめでとうなんであった。他の連合、単独が消えてしまった今、宮前の面目躍如である。
更にこれから宮前軍団には「川崎市長杯」が待っている。
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2016年10月20日木曜日

小説「月に雨降る」28

右手の中の紙切れを握りしめながら、自由が丘駅へ向かう龍一の足取りは重かった。この二週間なにも手をこまねいて漫然と過ごしていたわけではない。消息を断ってから真っ先に希伊の友人数人に連絡を取ってみた。龍一が電話番号まで知っている者は少なかった。希伊がいなくなった理由を話すには、徒歩でサハラ砂漠を横断するくらい気が遠くなるような労力を必要としたし、簡単に言えることでもなければ言うべきことでもなかったので、彼女たちには適当な嘘を並べて訊ねてみた。誰にも連絡はなかった。希伊はまだ携帯を持っていなかったので、彼女らから希伊に連絡することも出来ない。更に希伊と初めて知り合った時の池袋のアルバイト先にも連絡を取ってみた。電話には当時二人を可愛がってくれた店長が出た。
「龍一かあ、おまえ元気してるか。たまには顔を出せよ。おまえは来れなくてもいいから、希伊ちゃんだけ来てくれてもいいぞ」
「店長久しぶり、ご無沙汰です。しかし店長まだ飽きずに店長してるんですね」
「うっせぇ。心頭滅却すれば火もまた涼し。一意専心、粉骨砕身、俺の長年の努力が認められてな、来期から本部付けの管理職に昇進だぜよ。おまえらが来た時奢ってやれるのも今のうちだけだぞ。とっとと遊びにこい」
「えっ、店長がスーツにネクタイですか。全く想像出来ないなあ。南極のペンギンが空を飛んでアフリカの猟師に撃ち落とされるくらい信じがたいことですよ」
「おまえ何言ってんだ。ペンギンだって努力すれば空を飛べるはずだよ。あいつらきっと努力が足らないんだよ」
「そうか。だったら北極のシロクマだって努力すれば、ハワイに別荘を構えて週末はワイキキでバカンスを楽しむことだって可能なんですね」
「うむ。そういうことだ」
当時と同じく気心の知れた会話は今も健在だった。店長は龍一と希伊が同棲していることは知っていた。バイトを辞めてからも結婚式には必ず俺を呼べよとまで言ってくれていた人だった。慎重に理由は伏せて、それとなく希伊のことを訊ねたがやはり知らなかった。
また、警察に捜索願いを出そうかとも思ったことがあった。中野区の交番の前を通りかかった時に思わず警察官に声をかけそうになったが思いとどまった。配偶者でも肉親でもない同棲相手の男が申請しても、すんなり受理してくれるとは考えにくい。それどころか、どうせ喧嘩別れでもして女に逃げられた哀れな男だろうと見なされて冷笑されかねない。いや、下手をすれば根拠もなくストーカー扱いされて逆にブラックリスト入りされる可能性だってある。昨年の桶川事件を契機に今年の五月にはストーカー規制法が成立したばかりだった。警察の怠慢な対応も世間的に問題視されて、法の施行はまだだったが警察当局だってストーカー問題には神経を尖らせているはずだ。更に龍一の頭に浮かんだのは興信所や探偵事務所に依頼することだったが、龍一の給料と蓄えではそんな金を捻出することは出来なかったし、たとえ依頼しても見つかる可能性は低いだろうと思ったのだった。

万策尽きた、とはこのことか。もう踏切を渡れば自由が丘の駅前ロータリーだった。入社して間もない頃設計アシスタントを務めた、左手にある高級子供服専門店を横目で見ながら改札へ向かった。希伊と普通に結婚して子どもをもうけたら、もしかしたらこの店で幼い子の洋服を買っていたのかもしれない。そんなことを思いながら、ポケットの中の、かな江から渡された紙切れをもう一度強く握りしめた。
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2016年10月17日月曜日

小説「月に雨降る」27

龍一がかな江の横顔を窺うと、丁寧な言葉遣いとは裏腹に、どこか楽しそうに目尻を下げていた。いたずら好きの女の子が同級生にドッキリを仕掛ける時みたいに。とりもなおさず希伊もそんな明るい性格だった。つい一ヶ月ほど前、残業で遅くなり灯の消えた暗いアパートに帰った時に、急に後ろから希伊が抱きついてきて龍一を驚かせたことがあった。互いに向き直ってからびっくり顔の龍一を見て、いたずら好きな小学生のようにからからと笑い、改めて豊かな胸を龍一に預けて抱きついてきた希伊だった。
「城崎さんは希伊のことを希伊ちゃんって言うんですね。なんか安心しました。さっきの永山の奥さんは会話の中で一切名前を言わずに、ずっと希伊のことを『あの子』とばかり言ってましたが」
かな江はにっこり笑うと言った。
「私と希伊ちゃんとの関係は、ただの家政婦と雇い主のご令嬢の関係ではございません。
私が永山家に家政婦としてお世話になったのは私が二十歳くらいの頃からでした。あれから二十六年間ずっとです。あら、私の年がばれましたわね」
かな江は龍一に顔を向けて続けた。
「神島さん。二十六年間という数字で思い当たることはございませんか」
龍一の頭に何か引っかかるものがあった。自分も希伊も二十六歳だ。
「あっそうか、希伊がこの家に引き取られて来た時から城崎さんは家政婦として勤めているんですね」
柔和な顔でかな江は頷いた。
「そうです。つまり私は希伊ちゃんのお守役みたいな形で雇われました。当時家政婦は二人いたんですが、赤ん坊が一人増えて専任で面倒を見る女性が必要だろうとのことで。普通なら経産婦で育児経験のあるベテラン女性が良いのでしょうけれど、永山家との遠い縁故関係もあったり、短大を出ていわゆる家事見習いで就職することもなかった若い私に白羽の矢が立ったんです。二人の家政婦のうち先輩の一人と交互にお世話をすることになりました。もともと子ども好きだった私は希伊ちゃんのお世話に夢中になりました。さすがに母乳を与えることは出来ませんが、夜中にミルクを作ったり、おむつを替えたりもしましたんですよ」
その時あの奈津子という人はのうのうと暖かいベッドで安眠を貪っていたのだろうか。そのことは考えないようにした。また気分が悪くなりそうだったからだ。
「私は希伊ちゃんとあの家で一緒に育ったようなものです。奥様は養女である希伊ちゃんを養母として育てるというよりは、悪く言えば管理するような感じで、本当の育児や一緒に遊んだりご飯を作ったりは、私が中心になってやりました。先輩家政婦にいちいち訊いたり一生懸命育児や料理の本を読んで勉強したり。小学生になっても中学に上がってからも、宿題を見たり思春期の悩みを聞いてあげたりと、私はうんと若い母親のような、或いはうんと年の離れた姉のような、そんな不思議な絆で繋がっていたんです。希伊ちゃんも表面上は奥様の言うことを忠実に守りながら、本当に心を許していたのは私だったと思います。あの日曜日に家を飛び出して行った時も最後に私に、かな江さん今まで本当にありがとう、かな江さんのことは一生忘れませんって言って、泣きじゃくりながらお互い抱き合いました」
それを思い出したのか、かな江の声には湿り気が帯びて少し鼻をすすった。
そうだったのか。希伊はこの城崎という女性に可愛がられ、人並みにちゃんとした明るい女の子にすくすくと育ったのに違いなかった。産みの親よりも育ての親と言う。いや少し違う。金沢の顔を知らぬ両親の血を受け継ぎ、本当の育ての親である、かな江の愛情でしっかりと希伊という人格が育まれていったのだろう。
「あら、いけないこんな時間。別の家政婦さんにすぐに戻って来るからと言って神島さんを追いかけてきたんですけど、もう帰らなきゃいけません」
「追いかけていらしたのは、僕にわざわざ城崎さんと希伊とのことを話すために?」
「はい、もちろんそれもありますが」
かな江は龍一からちょっと目をそらして、何かを躊躇っているようだった。
「奥様は確かに希伊ちゃんの居所は知らないと思います。旦那様も諦めてしまったと思いますが、もし直接旦那様にお会いになるお気持ちがありましたらと思いまして」
そう言ってかな江がポケットから取り出した紙片には090で始まる番号が書かれてあった。
「旦那様は仕事用と個人用と携帯電話を二つお持ちです。私には緊急の用件の時だけ個人の番号へかけるようにと言われてまして、この番号を教えられました。他人である神島さんにこれを教えることはいけないことは重々分かっているんですが」
「分かりました。ありがとうございます。もしこの番号にかけることがあっても、決して城崎さんにはご迷惑にならないように気をつけます」
紙片を受け取った龍一は頭を下げて礼を言った。それに対しかな江は龍一よりももっと深々と頭を下げた。
「でもどうして初対面の僕にここまで親切にして下さるんですか」
「だってあの希伊ちゃんが選んだ人ですもの。悪い人なわけがありませんわ」
それにと言ってかな江は言葉を続けた。
「神島さん。もし希伊ちゃんの消息が分かったら私にも是非お知らせ下さいませんか」
龍一はにこりと笑みを浮かべて言った。
「もちろんです。今までの城崎さんのお話を伺った以上、所在が分かったら真っ先にお知らせするのが当然の義務だと思ってます。本当の育ての親ですもんね」
二人は互いに携帯番号を交換して別れた。

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2016年10月16日日曜日

落ち葉舞う頃

このところオトナの諸般の事情というやつで、フレンズには行ったり行けなかったり。来週末はまた連合クラブJrの決勝があるのでココロはそちら方面へ向いたりしちゃっているんである。今日、日曜は行けた。顧問のKanedaさんとも久しぶりの対面。
「テッシー、何?奥沢神社?俺、昔奥沢に住んでたことあるんだよ」
「ええ〜!?」
小説ブログをちゃんと読んでもらっての会話なんであった。筆者は1ヶ月ほど前に同い年の友人(仕事仲間でもある)が奥沢病院に手術入院し、それを見舞った帰りにすぐ近くの神社に寄ったのだった。自由が丘は若い頃から何度も行っていたが、奥沢はそれが初めての地だった。その時はまさかこの奥沢神社を小説に使おうとは考えもしなかったんである。のちのち希伊の実家が自由が丘ということもあり、この神社のことを登場させようと、書いているうちに閃いたのだった。小説に登場するこの鳥居にからみつく龍のような大蛇は、お話の最後に重要なキーポイントとして再登場するはずだ。ただし、それがいつになるかは神の味噌汁...じゃない、神のみぞ知る、なんである。


おっとどっこい、少年野球ブログなんであった、今回は。
あじさいリーグVS寺尾ファミリー戦。六年生は連合で間に合わないかと思いきや、ギリでセーフ、久々のオールAチームで臨むことができた。


おやおや?
ベンチにOhshiroコーチがなにやら神妙な顔つきでスコアラーInoueさんに訊いているではないか。スコアラーの勉強を始めたのだった。事情を聞くと息子のRuiが通っているシニアチームではお父さんもスコアラーをやらねばならないのだそうだ。それで必死に勉強していたんであった。彼はどうにもペンを持って学習する姿は似合わないのだが、結構真摯にシートに向き合っていた。
色黒なのに(ゴルフ焼けか)ひげの濃さが目立つワイルドオヤジなんである。最近「りゅうちぇる」という奇妙なタレントがTV画面を賑わせていて、「ひげ濃いキャラ」を前面に出して売りにかかっているが、このOhshiroオヤジもまた、かの「ちぇるちぇるランド」の出身なんである。

6年生ふたり。連合も敗退しFももうじき引退ではある。

校門近くに珍しく鳩がいた。普通とちょっと違う羽根模様。なんだかスズメバチの巣を連想させる。

低学年のKazukiが三塁ランコーに。この子はどうにも憎めないキャラなんである。遠くから見ていると思わずニンマリしちゃうような、ココロの底がホッコリしちゃうようなモッチャリした笑顔の持ち主なんである。

おやおや?
何やらエライ人口密度が高いスポットが出現していた。越冬する小動物が狭い穴蔵で身を寄せ合うように。

おやおや?
フレンズの誇る美人妻軍団が「6年生を送る会」の打合をしているのだろう、たぶん。落ち葉舞うころ毎年この時季目にする光景である。こちらも人口密度がハンパない。
日本人女性みんなで日本列島を離脱しバチカン市国に移住したみたいに。

最後は恒例二組にわけてのベーランリレー。
筆者帰り際に数人を活写。
これから連合クラブJr決勝、オレンジ決勝トーナメント、そしてその向こうにいよいよ新人戦が控えている。今年も先が見えてきた。筆者もかなり焦らなければいけない時季となった。

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2016年10月12日水曜日

小説の御法度

まだ完結していないのにもかかわらず、小説「月に雨降る」の仕掛けやカラクリや、登場人物のモデルの有る無しなどについて書いてしまうのはもちろん御法度ではある。しかしたまに小説のことを訊かれることがあるので、ほんの一例だけつまびらかにするとすれば、あるにはある。例えば、龍一の出身地は高知となっているけれど、筆者のそれは山形なので架空の設定。龍一の勤める会社「T&D」が恵比寿にあるというのは、筆者が個人設計事務所を持っていた頃、それは恵比寿だったので半分は事実に基づいた話である。ちなみに龍一が恭子と行く恵比寿のバー「Maki」は、当時何度か通った恵比寿神社の横にあったバーがモデルで本当なんである。ただし店名の「Maki」は創作である。Makiには理由があって明かせないけれど。更にマスターの恐ろしく無口な真壁という男はそのバーの本当のマスターがモデルだ。でも真壁という名前は架空。真壁は筆者の結婚前の実名なんである。


タネ明かしをすればきりがないのでここまで。でももう一個だけ。
作中に出て来る子猫の「サチコ」は筆者が昔飼っていたニャンコがモデルになっている。結婚当時恵比寿に住んでいた時から同居していたキジトラの可愛い猫だった。名前は「ももこ」

この「ももこ」を筆頭に次に飼ったのがやはりメスニャンコの「ぴあの」。黒猫だったので当時息子がピアノの黒に着想を得て名付けた。この「ぴあの」に関しては昔失踪した顛末を数回に分けてこのブログでも書いた。「ぴあの」で検索すれば出てくると思う。
リンクはこちら。文章がまだ若くて稚拙(ちせつ)なのはご愛嬌と許されたし。
「ぴあの」

更に現在同居しているのはワンコのミニチュアダックスの「りん」
りんが若い頃に撮って加工した写真がこれ。今は人間で言えばおばあちゃんである。

先日配偶者に代わって久しぶりに「りん」のシャンプートリミングをするべく、近所のペットショップ、有馬の「ペットフォレスト」へ連れて行った。ぽっちゃり系の可愛いトリマーのお姉さんが応対。その間店内のケージを巡回してみる。はあ、なんて動物って可愛いのだろうと、感慨を新たにする私なんであった。

ワンコやニャンコが展示されているそのケージを巡回していると「この子だ!」と思ったニャンコに出会った。
イメージ通りのキジトラではないけれど、こんな子猫が小説「月に雨降る」作中の「サチコ」のイメージなんであった。
iPhoneでパチリ。
左手の肉球をチラ見せしつつ、右手を折り曲げ胸の中に押し込み、目を細めて眠る姿のなんと可愛いことか。
シャッター音に反応して一瞬目を開けて筆者を見つめてきたが、「また人間どもが写真撮っているのか」てな顔して眠たげにすぐまた目を閉じたのだった。

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2016年10月11日火曜日

小説「月に雨降る」26

奈津子は顔を上げて言った。
「あの子はそんな小さい頃のこともあなたに話したの」
希伊からはそんな虐待された話など何も聞かされていなかった。龍一の直感だった。たぶんこの人も幼い頃同じ体験をしてきたのだろうか。天童荒太や重松清などの家族小説で学んで知っていた。幼児期に虐待を受けた者は大人になってから自分の子にそれを繰り返す傾向があるということを。龍一も子どもの頃は厳格な父親が怖くて悪さをするたびに何度も頭を叩かれたりしたが、それを虐待と思ったことは一度もなかった。虐待にはある種の「憎しみ」が伴うのもなのだろうか。ましてや、この人は血の繋がりのない他人の子の養育を強引に押し付けられたのだ。しかしだからと言って虐待が看過される理由には絶対ならない。
幼児期に刷り込まれた虐待経験は繰り返す。
希伊がなぜこのことだけを俺に話さなかったのか。希伊がなぜ結婚や子どもをつくることを嫌がったのか。今やっと氷解したのだった。希伊が自分もそれを繰り返すことになる「負の連鎖」の可能性を怖れて、言い知れぬ暗澹(あんたん)たる不安があったのだろう。
もうここにいる意味がなかった。早く外の空気を吸いたくなった。
「今日は失礼しました。最後にもう一度訊きますが、希伊の消息はわからないんですか」
奈津子の虚ろな目は赤く充血して、宙を彷徨(さまよ)っているようだった。
「私も知らないの。あなたの言う二週間前の日曜にここへやって来て、私はこれから消えます、捜さないで、法的にもちゃんと離縁の手続きをして下さい、と言って出て行ったわ。主人もさすがに諦めたようで仏頂面で見送ったの。それと...」
「それと」
「最後に、もしかしたら神島という男性が訪ねて来るかもしれないけど、会わないでちょうだいって。なぜなら...」
「なぜなら」
「こんな親、恥ずかしくって彼に会わせたくないからって。しばらく沈黙したあとあなたのことが胸に迫ってきたみたいで、突然泣き叫んでここを出ていったの」
龍一は呆然とした。
失礼しますと言い置いて、奈津子を振り返らずに辞去した。どこをどう歩いたのか分からないまま、気がついたら奥沢神社の鬱蒼とした樹々に囲まれた境内にいる自分に気づいた。奈津子が言った最後の希伊の話を胸の中で反芻してみる。喉の奥が誰かにぎゅるりと捕まれたように締めつけられて、次第に下瞼から熱いものがほとばしり出て頬を伝った、とめどなく。それは突然の夕立がやってきて地面に大粒の雨が落ち、たちまち灰色の斑点を作るように、龍一の足元にぼたぼたと音を立てて落下していった。この涙がやがて大きな川になり、日本のどこかにいるだろう希伊の元へ流れて行って欲しかった。今の自分の想いを伝えるために。そこまで思い詰めていた希伊を救ってやれなかった自分を責めてみたが、あの時の自分も今の自分にもどうすることも出来なかった。自分の元を去り更に永山家とも縁を切った今の希伊は、文字通り天涯孤独の身になっているはずだ。その胸中を推し量るとますます胸を締め付けられる思いだった。

誰もいない境内の大きな銀杏の樹の下で途方に暮れて佇んでいた。どれほどそうしていたのだろうか。地べたに膝をつき肩を落としている龍一の背中を後ろからそっと触れる気配があった。驚いて振り返ると先ほどの家政婦が神妙な面持ちでいながら、優しい視線を龍一に投げかけていた。
「私は家政婦の城崎かな江と申します。先ほどは失礼いたしました」
立ち上がった龍一の頬に残されたその形跡を見て取って、かな江はそれが何を意味するかを理解したようだった。
「あまり時間は取れないのですが、少しお話をよろしいでしょうか。良かったらそこの階段に腰掛けませんか」
見るとすぐそこに立派な拝殿があり、中央に三段ほどの階段が設(しつら)えてあった。龍一は立上がり顔を両手でごしごしとこすりながらそこへ歩み寄った。かな江もあとから並んで座った。

「失礼とは思いつつも、先ほどの会話はドア越しにだいたいのことは聞いておりました。申し訳ございません。普段ならそんなことは一切しませんけれども、こと希伊ちゃんに関わることですから居ても立ってもおられず、ついテレビドラマのようなまねをしてしまいました」
そう言うかな江はにっこり笑みを浮かべて龍一を見つめた。
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時間をリバース

かなり前のブログで荻原浩の「明日の記憶」の話を書いたと思う。
小説を読み、映画も観た。私の好きな小説の一冊であり、好きな映画の一本でもある。主演は渡辺謙と樋口可南子。若年性アルツハイマーの話ではあったのだけれど、ハッピーエンドには至らない、苦悩の恐怖小説だと思った。そんじょそこらのB級ホラー映画を凌駕して余あるものだった。もし私がうんと若い頃に読んだならば、また別の感想を持ったかもしれないけれど、当時の読後感や観賞後は戦慄が走ったものだった。夕日に赤く染まった渡辺謙と樋口可南子のラストシーンは今でも瞼に焼き付いている。若い頃ならば自分とは無関係の単なる感動的な名画として記憶に残るだけだったかもしれない。しかし当時働き盛りの年齢だった私には、いつ自分にも襲いかかるかもしれない恐怖として捉えたものであった。
それが、まさか自分ではなく身近な人間がそうなった場合のことは当時は考えもしなかったけれど、仮にそうなった場合....また別の違った意味での恐怖が胸の底からじわりと迫って来るものである。
....................
そんなこんなでここひと月ばかりは、少年野球にまつわるブログを書いていても、或いは小説をアップしていても実は心はどこかうわの空だった。満月の夜に空を見上げる狼男のような、またはパリからの帰国便で観た、ジェーンフォンダが親子で共演した映画「黄昏」(たそがれ)のような気分である。地に足がついてなく気分だけは張りつめていても、時間は地球の自転軸に従ってゆっくりと、しかし確実に過ぎてゆく。地球の回転を逆戻りさせることはたぶん私には出来ないと思う。
....................
重たい話はここまでにしよう。いつもの少年野球「晴耕雨読」的ブログに戻りたい。三連休明けの出勤途中の電車でこんな話を読ませてしまうことは筆者の本意ではないし。

さてフレンズはオレンジボールを想定外の快進撃で予選リーグを突破し、巴戦を回避しついに決勝トーナメント進出を果たしたんである。巴戦を回避して一番喜んだのは連盟事務局なのかもしれないけど。フレンズLINEにNakamura事務局から報告があった。久々に盛り上がったLINEに乗じて監督Itohくんからも宮前連合チームも勝ったとのコメントあり。その後11回の死闘の末勝利したベイスターズファンのNatsuki母のコメントを皮切りに、良い意味で不毛のオバカなLINEのやりとりが怒濤のごとくピコピコ鳴った。フレンズらしい会話の応酬で読んでいて微笑ましかったんである。

更に淋しい知らせと明るい希望。
Q監督Koshimizuさんから一斉メールがあった。宮前Queensは6年最後の公式戦を闘い無念にも惜敗。しかしそのあと苦悩の末の決断であったろうと想像に難くないKoshimizuさんの文章には、来年も監督を「続投」するとの文字が並んでいたのだった。シーズン半ばから来期は監督を辞退すると公言していた監督だったが、「苦渋の英断」だったのではなかろうか。いずれにしてもQueensにとっては朗報、いや吉報であった。先日の連盟主催秋季懇親会で会長SohmaさんがMurata代表と筆者に言っていたことがいまだに耳に残っているんであった。
「Koshimizuさんが監督じゃないQueensはQueensじゃないよ」
....................
前回までの小説は果たしてどこまで記憶に残っているんであろうか。
ここらで一筆「ここまでのあらすじ」的な要約を書いたほうが良いかもしれないとは思いつつ、ちょっと気分的に食指が動かずやはりそのまま掲載したい。希伊を探し求めた龍一が自由が丘の実家に行き、育ての母親奈津子と対峙した場面までであった。
このブログのあと「月に雨降る」を久々に載せるんである。
※読者諸賢のみなさまには、ブログ順番的には上の小説を読んでから、下のこの記事を読むことになるけれど致し方ないわけで。地球の自転や時計の針を逆戻しすることはやはり不可能なんである。

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