宮前秋季大会決勝トーナメント。初戦は....なんというくじ運のなさ。相手は富士見台ウルフなんであった。全国大会3位の勲章と実績をひっさげて、現在県大会も連勝街道を爆走中なんである。この日はなんとこれが3試合目のトリプルゲームなんである。
昨年の神奈川県代表と今年の代表との激突...というのは言葉の遊びに過ぎなかった。ウルフの実力はもう周知のとおり。しかしフレンズのそれは昨年との落差が激しい。予選リーグを突破して決勝トーナメントまで進んだだけでも、年初のチーム事情を鑑みればほぼ奇跡に近いものなのだが。
しかし1点くらいは欲しかった。
9:0の完封負けなんであった。
今回ブログはここまで。体調もまだ完全ではなく、その日によってあるいは時間帯によって波があって困ってしまう。せめてフレンズがもう少し覇気を持って一矢報いるがんばりをみせてくれていたら、もう少しは書けるはずなんだけど。
今回は筆者の頭の電池切れ、体のガス欠ゆえ短文にて失礼しちゃうのだった。
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2016年8月28日日曜日
2016年8月26日金曜日
小説「月に雨降る」20
羽田空港の喫煙室で鈴木孝雄と月地信介と待ち合わせ、9時発の鹿児島便を待ちながら最後の煙草を吸っていると龍一のiPhoneが震えた。恭子からのLINEだった。
『おはよ。もうすぐ飛行機出るね。ちゃんと起きれた?』
孝雄たちはもう喫煙室を出ようとしている。急がなきゃいけない時間だった。既読スルーは悪いと思い、急いでスタンプだけを送った。恭子の『ちゃんと起きれた?』には理由があった。鹿児島のクライアントへプレゼンするのに昨晩は会社で終電まで粘ったのだがどうしても終わらず、このまま社内で中途半端に徹夜するよりも、家に帰り風呂に入ってさっぱりしてから、朝まで自宅のMacで作業をしたほうが効率が良いと判断し、データを入れたUSBをバッグに放り込み、終電間際の酒臭い満員電車で帰宅したのだった。自宅のプリンタで出力したのではカラーレーザーとは雲泥の差がある。とても仕事で使えるレベルではない。仕上げたCADデータを全てPDFに変換しUSBに保存。それを現地鹿児島のセブンイレブンのマルチプリンタで10部出力し会議へ持って行くという、かなりサーカス的な綱渡りの状況だった。
恭子は事務職なので昨晩7時には退社したのだが、龍一の徹夜のことは電話で訊いて知っていたのだった。
東京湾上空は快晴だった。機首は一路西へ向けて湾を迂回した。眼下に点在するいくつかの雲の影が地表に投影される。ときおり飛行機自身の機影も山々の緑のじゅうたんの上を這っていた。機内を見渡すと孝雄たちとは席はばらばらだった。恭子がパソコンで出張のJAL便を手配するが、座席は搭乗前に各自がJALカードを使って発券機で取るためだった。孝雄は週刊誌を読んでいた。信介はと言えば個人のマイルを利用して前方のワンランク上の大きな座席を取って何やらCAと親し気に話をしている。アイツらしいなと苦笑しながら龍一は文庫本を開いた。たった1、2ページ活字を追っているうちに視界がぼやけてきた。子どもたちはちゃんと学校行ったかな。たとえ無人島に漂流しても生きていけるだろうと思われるくらい独立心の強い中二の息子は心配ないが、最近親父との会話がめっきり減った小学生の娘は大丈夫だろうか。そんなことに思いを巡らせていると、ふいに薄暗がりで落とし穴に落とされたように、睡魔に足元をすくわれた。
機体の揺れが激しくなり、目が覚めてみるとすでに鹿児島県近くの上空だった。
龍一の隣の座席には帰省する途中なのだろうか女子大生らしき女の子が座っていた。むくつけき中年のオッサンが肩が触れんばかりの距離に存在するよりは、うら若き女性が隣席にいるほうがいいに決まっている。しかし龍一は思い直した。俺だってもう40過ぎだ。この女子大生から見ればむくつけきオッサンの一員にしか見えないかもしれないではないか。会社にはばれないように付き合っている二十代前半の恭子の目から見て、俺はどう見えるのだろうか。年の差はおよそ二十近くある。右肩に重みを感じてふと隣の女子大生を見ると、あどけない顔をした彼女が頭をもたせかけて来ていた。あともう少しだしこのままの状況も悪くはない。迷惑そうな顔をして無理に彼女の頭を押しやるほど俺は無粋な男ではないと龍一は思った。仮りに男だったならもちろん速攻で押し返している。
外はかなりの悪天候になってきたようだった。そういえば台風が接近しているとか昨晩の徹夜仕事でつけていたラジオで言っていた気がする。窓外に見える主翼はおまえ本当に金属なのかと疑いたくなるほど上下にしなっている。機体が激しく揺れるのにやっと慣れ始めたころ、突然急降下したかと思えばかろうじて水平を取り戻したり、また左右に揺れて急に落ち始めたりの連続が始まった。こんな時『ジェットコースターのように』という手あかのついた形容があるがまさにこれだと思った。機内では何人かの女性の悲鳴が聞こえる。龍一にもさすがに緊張が走った。それでも女子大生は龍一に上半身を預けたまま起きなかった。どれだけ熟睡しているのだろう。睡眠薬でも盛られたか。もうすぐ鹿児島空港なはずだと思ったら、機内中央のテレビモニターが機首に取り付けたカメラ映像に切り替わった。暴風雨で視界はすこぶる悪い。昭和三十年代の街頭テレビよりも画質が粗い。左右に点滅する滑走路のガイドラインの灯が心もとない。みるみる体にGがかかり滑走路の映像が大きく目の前に迫って来て、コンクリートの路面が画面いっぱいに占めてきた。
タイヤがきゅるきゅると悲鳴をあげて煙を発する画が龍一の頭をよぎる前に、いきなり地球に体が引っ張られる感覚に襲われた。モニターの映像は先ほどまでの滑走路ではなく、灰色の雨空と思われるものが映し出されていた。地球から垂直に宇宙へ打ち上げられたスペースシャトルに乗ったような感覚だった。機内に悲鳴が錯綜する。機は着陸寸前に強い横風を察知し管制塔の指示で急上昇をしたのだった。少し経ってから機長アナウンスで分かった。2、3回空港を旋回したあと機はどこかへ真っすぐ向かって行くのが分かった。バンジージャンプを飛ぶか飛ぶまいかさんざん迷った末に未練がましくキャンセルしたみたいに。
このあとの機長のアナウンスによると、九州各地の空港はどこも悪天候で、かつ避難する航空機で混雑しており、当機はいったん伊丹空港へ向かうとのことだった。このアナウンスの直後孝雄と信介と龍一はそれぞれの座席でアイコンタクトで目を合わせたがもはや笑うしかなかった。
薄曇りの大阪伊丹空港へ到着し、燃料補給が行われた。髪がギリシャ神話のメドゥーサのようになった女子大生がやっと目を覚ましたようだった。龍一に向かって寝ぼけまなこで言った。
「あのう、もう鹿児島着いたんですか?」
「いや、ここは大阪の伊丹空港だけど」
「えっ、私鹿児島行きのチケットで乗ったのに。え、え、え、どうして?」
苦笑しながら事の顛末を手短かに説明した龍一だったが、彼女はまだ自分が置かれている状況が信じられないようだった。龍一にしてみればあのパニック映画のような揺れの中で、全く目を覚まさなかった彼女のほうが信じられなかった。孝雄はクライアントへ速攻で電話を入れて事情を説明し了解を得たようだ。会社にも予定の大幅な変更を報告していた。信介は龍一の席へやって来て「いやあ、参ったっすねえ、こんなことってあるんですね」となぜか嬉しそうにニヤニヤしながら、また席へ戻りCAに声をかけて飲み物を頼んでいた。
このあと機はもう一度鹿児島へ向けて出発し、まだどんよりした雲が残る鹿児島空港へ無事到着したのだった。にほんブログ村
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2016年8月23日火曜日
少年野球と美人女医
日曜はあじさいリーグ、VS山田バッファローズ戦がありバイクで横浜方面へ。通院治療中の帯状疱疹はまだ完治ではないけれど、だいぶ良くはなってきたんである。この日も体調は良かったので行ったのでった。しかし翌月曜はまた胸の痛みがぶり返し、終日右胸に鈍痛があって何もやる気がしなく、これはヤバいと再認識した次第なんであった。本日また宮前平の医院へ行ってきた話は最後に書こう。
さてよほどお蔵入りにしようかと思っていた試合がある。8月7日だからおよそ二週間以上も前のゲーム。その頃すでに帯状疱疹初期症状になっていて、(その当時は内科の謎の病だと思っていたけれど)ブログに食指が伸びずあっという間に時間は過ぎウルフの全国大会などが始まったりしちゃったのであった。お蔵入りするには忍びないと思い、かといって詳細を書くには鮮度が落ちており消費期限はまだいけるものの賞味期限は過ぎたと思い、写真にコメントを寄せるカタチで簡略化したいんである。
秋季大会ブロックリーグ、フレンズの前の試合では松風Abe監督の厳しい表情と、対する馬絹メイツKimura監督のにこやかな表情が、このあとの試合結果を物語っている。
何しろ炎天下である。熱中症はとかく子どもや老人のことが取りざたされるが、日々この日本を支えて働いているオヤジたちだって疲れているんであるからして、熱中症になっていけないという法律はない。本部席後方には急遽救護ベッド(パイプ椅子で)を用意、コンバットの前線の兵士から一歩下がったところの救護テントのように。本部席は上を雨と日差しよけのシートを張ってあるが、風がない日は結構蒸すんである。連盟副事務局長Nishimuraさんが氷のうを頭に横になっていた。しかし残念ながら保健室の大学を出たばかりの優しい女先生はここにはいない。
フレンズの試合はリトルグリーンズ戦。
先発はF、Kaito、LGはGushikenくん。
マスクをかぶるのはQueensでおなじみYamadaraさん。大量の汗をかいていた。
これは試合後の煙草談義だけれど、Yamaderaさんが言っていた。「いやあ、フレンズさん、実にまとまりのある良いチームになりましたねえ」と。
最終回の三番LG.Ohnishiくんのセンターオーバーの本塁打はお見事。
試合は5:2でフレンズ。
フレンズベンチ後ろの芝生の丘では、3名の貴婦人がたが日傘をさしてご観戦されておりました。
球場をあとにする時、ふと三塁側のベンチを階段下から見上げると、鷺沼ヤングのKurosu監督の背中がやけに小さく見えた。それがまた試合内容を物語っているんであった。
...................
さてブログはここから二週間後の今に戻る。
日曜のあじさいリーグ山田バッファローズ戦である。今度こそさっくり行くぞ。
さすがは横浜の公園である。広々としたグランドにベンチにはちゃんと屋根まで完備。宮前の第一公園にも欲しいところだが、三塁側は物理的に無理がある。本部席にエアコンを完備させたいが、金銭的に無理である。
スコアラーはMitsuyo女史。これをサポートするのは彼女の愛犬Hana。宮前公式戦ではダメだがあじさいなので良しとする。Hanaがワンと吠えればワンストライク。ワン、ウー、ウー、ウー、ワン!と吠えればツーストライクスリーボール。本塁方向を見ずともスコアがつけられるわけだ。しかしファウルボールの時は困るわけで。
以下写真にて。結果は10:8でいい勝負だった。Fが勝利。
.....................
次の日筆者はまた体調が悪くなり胸が痛くなって台風の空模様同様、どんよりした気分に。
でもって今日火曜日はネット予約して医者に行く日であった。
ちょっと嬉しいのである。以前のブログにも書いたけれどこの日の午後は美人院長の診療日なんであった。普段はかなり多くの他の女医さんが担当するんであるが。
先生「はい見せて下さい。ああ、だいぶ良くなってきましたね。かさぶたになってますので、もう子どもに感染することもありませんよ。普通の生活に戻って大丈夫です」
筆者「先生。ですが、いまだに胸の奥が時々痛くなるんですが」
先生「そうですか。じゃあ、もう二週間分お薬を出しておきますので、また二週間後来て下さいね」
筆者「胸が痛む原因ってなんでしょうか。私見ですが、これは先生に一目惚れしてしまったせいです。恋の病(やまい)ですよ。なんて」
先生「あらまあ、お上手だこと。その手には乗りませんよ。おほほほほ」
※後半青字部分は筆者の妄想であってフィクション(虚構)である。こんなこと思っていても言えるわけがない。こんなセリフが言えるのは世界広しといえども、イタリア男のジローラモか、スピードワゴンの小沢くらいなものだろう(^-^)
実際の診察はたったの2分。早口で的確な指示を看護師に与えてもう次の患者の部屋へ去って行ってしまったんであった。
その後バイクを駆って帰路につく私。
何度も言っておくが筆者、スマホゲームとかは一切手を出さない主義なんである。あの楽しさは昔「インベーダー」や「IQ」というゲームにはまって、その功罪を知っているからだ。いい大人がゲームに夢中になっている姿を見ると、軽蔑するほうのタイプである。かつての若い自分がそうだったけれど、若いから許されたかもしれないと思う。
でも何度も言うがあのポケモンGOは話のネタ半分でやっている。現実空間と仮想空間の融合に興味があったから。なので今でも暇な時にやってみるんである。はまってはいないけれど、射幸心をくすぐる達成感はなかなかのもの。
バイクで走っていると家が近づいてきた。川があるところには「水系ポケモン」が多く潜んでいるんだそうな。有馬川の橋を渡る時にバイクを止めてポケGOを起動してみる。
「がお〜」
現れたぞ、コイキングなるモンスターが。ボールを投げる前に画面のスナップショットを撮ってみた。バイクの左ミラーあたりで暴れている。撮ってみたらミラーにヘルメットをかぶる筆者の姿も写っていた。まるでスターウォーズのダースベイダーみたいだった。
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さてよほどお蔵入りにしようかと思っていた試合がある。8月7日だからおよそ二週間以上も前のゲーム。その頃すでに帯状疱疹初期症状になっていて、(その当時は内科の謎の病だと思っていたけれど)ブログに食指が伸びずあっという間に時間は過ぎウルフの全国大会などが始まったりしちゃったのであった。お蔵入りするには忍びないと思い、かといって詳細を書くには鮮度が落ちており消費期限はまだいけるものの賞味期限は過ぎたと思い、写真にコメントを寄せるカタチで簡略化したいんである。
秋季大会ブロックリーグ、フレンズの前の試合では松風Abe監督の厳しい表情と、対する馬絹メイツKimura監督のにこやかな表情が、このあとの試合結果を物語っている。
何しろ炎天下である。熱中症はとかく子どもや老人のことが取りざたされるが、日々この日本を支えて働いているオヤジたちだって疲れているんであるからして、熱中症になっていけないという法律はない。本部席後方には急遽救護ベッド(パイプ椅子で)を用意、コンバットの前線の兵士から一歩下がったところの救護テントのように。本部席は上を雨と日差しよけのシートを張ってあるが、風がない日は結構蒸すんである。連盟副事務局長Nishimuraさんが氷のうを頭に横になっていた。しかし残念ながら保健室の大学を出たばかりの優しい女先生はここにはいない。
フレンズの試合はリトルグリーンズ戦。
先発はF、Kaito、LGはGushikenくん。
マスクをかぶるのはQueensでおなじみYamadaraさん。大量の汗をかいていた。
これは試合後の煙草談義だけれど、Yamaderaさんが言っていた。「いやあ、フレンズさん、実にまとまりのある良いチームになりましたねえ」と。
最終回の三番LG.Ohnishiくんのセンターオーバーの本塁打はお見事。
試合は5:2でフレンズ。
フレンズベンチ後ろの芝生の丘では、3名の貴婦人がたが日傘をさしてご観戦されておりました。
球場をあとにする時、ふと三塁側のベンチを階段下から見上げると、鷺沼ヤングのKurosu監督の背中がやけに小さく見えた。それがまた試合内容を物語っているんであった。
...................
さてブログはここから二週間後の今に戻る。
日曜のあじさいリーグ山田バッファローズ戦である。今度こそさっくり行くぞ。
さすがは横浜の公園である。広々としたグランドにベンチにはちゃんと屋根まで完備。宮前の第一公園にも欲しいところだが、三塁側は物理的に無理がある。本部席にエアコンを完備させたいが、金銭的に無理である。
スコアラーはMitsuyo女史。これをサポートするのは彼女の愛犬Hana。宮前公式戦ではダメだがあじさいなので良しとする。Hanaがワンと吠えればワンストライク。ワン、ウー、ウー、ウー、ワン!と吠えればツーストライクスリーボール。本塁方向を見ずともスコアがつけられるわけだ。しかしファウルボールの時は困るわけで。
以下写真にて。結果は10:8でいい勝負だった。Fが勝利。
.....................
次の日筆者はまた体調が悪くなり胸が痛くなって台風の空模様同様、どんよりした気分に。
でもって今日火曜日はネット予約して医者に行く日であった。
ちょっと嬉しいのである。以前のブログにも書いたけれどこの日の午後は美人院長の診療日なんであった。普段はかなり多くの他の女医さんが担当するんであるが。
先生「はい見せて下さい。ああ、だいぶ良くなってきましたね。かさぶたになってますので、もう子どもに感染することもありませんよ。普通の生活に戻って大丈夫です」
筆者「先生。ですが、いまだに胸の奥が時々痛くなるんですが」
先生「そうですか。じゃあ、もう二週間分お薬を出しておきますので、また二週間後来て下さいね」
筆者「胸が痛む原因ってなんでしょうか。私見ですが、これは先生に一目惚れしてしまったせいです。恋の病(やまい)ですよ。なんて」
先生「あらまあ、お上手だこと。その手には乗りませんよ。おほほほほ」
※後半青字部分は筆者の妄想であってフィクション(虚構)である。こんなこと思っていても言えるわけがない。こんなセリフが言えるのは世界広しといえども、イタリア男のジローラモか、スピードワゴンの小沢くらいなものだろう(^-^)
実際の診察はたったの2分。早口で的確な指示を看護師に与えてもう次の患者の部屋へ去って行ってしまったんであった。
その後バイクを駆って帰路につく私。
何度も言っておくが筆者、スマホゲームとかは一切手を出さない主義なんである。あの楽しさは昔「インベーダー」や「IQ」というゲームにはまって、その功罪を知っているからだ。いい大人がゲームに夢中になっている姿を見ると、軽蔑するほうのタイプである。かつての若い自分がそうだったけれど、若いから許されたかもしれないと思う。
でも何度も言うがあのポケモンGOは話のネタ半分でやっている。現実空間と仮想空間の融合に興味があったから。なので今でも暇な時にやってみるんである。はまってはいないけれど、射幸心をくすぐる達成感はなかなかのもの。
バイクで走っていると家が近づいてきた。川があるところには「水系ポケモン」が多く潜んでいるんだそうな。有馬川の橋を渡る時にバイクを止めてポケGOを起動してみる。
「がお〜」
現れたぞ、コイキングなるモンスターが。ボールを投げる前に画面のスナップショットを撮ってみた。バイクの左ミラーあたりで暴れている。撮ってみたらミラーにヘルメットをかぶる筆者の姿も写っていた。まるでスターウォーズのダースベイダーみたいだった。
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小説「月に雨降る」19
「誤解しないでよ、サチコちゃんの特別往診に来たんだから」
と言って由美はコンビニ袋を龍一に預けると、ソファに座っていたサチコに歩み寄り昨晩と同じような診察を始めた。サチコを診ながら龍一に声をかけた。
「どうせならと思って昼ご飯も買ってきたから、良かったら食べる?あっ、神島さん昼まだだよね」
「はい、まだです」
言われて急に空腹感が襲ってきた。考えてみれば土曜の晩に希伊とふたりで夕飯を食べたきり、今日月曜まで食事をしていなかった。昨日は終日食欲が全くなく、ものを食べるという発想すら頭になかったのだった。袋の中を見ると二人分の弁当と飲み物があった。
「すみません、ありがとうございます。実は僕、死ぬほど腹減ってました。小鳥遊さんは今お昼休みで、わざわざここへ?」
「そうよ。普段は近くのファミレスか、コンビニ弁当をクリニックの控え室で食べるんだけどね。なんか押し掛けたみたいに思われるのが嫌だったけどさ、心配だったから。電話しても全然出ないんだもの」
龍一はキッチンでお湯を沸かしインスタントのみそ汁を作りネギを刻んだ。希伊のお椀に由美の分を作った。二人でテーブルを囲みながら食事をすることになった。
「昨日ここにたどり着いたあたりから朝まで全く記憶がないんですけど、僕どうしたんですか」
「あれから大変だったのよ。ベッドに持ち上げて寝かせて、これで帰ろうかと思ったけど、熱があったからね。着替えをさせて冷蔵庫に保冷剤があったからタオルで頭に巻いたりして」
「えっ、そうだったんですか」
感謝の気持ちよりも羞恥心が勝(まさ)った。由美が年上の奇麗な女性だったせいでもある。
「何から何まで昨日は本当にありがとうございました」
箸を休めて龍一は真摯に頭を下げた。あの朝のじいさんといい、この獣医といい、自分は周りの見知らぬ人に支えられて今ここにいるのだと思い知った。ニュース番組などでまんざら日本も捨てたもんじゃないよと、訳知り顔のテレビのコメンテーターが言うのも納得がいった。そんな龍一の心情を察したかのように由美が言った。
「私だってね、いろんな人に助けられて今があるの。離婚で落ち込んだ時に娘の一言に救われたりとかさ。クリニックを開業する時なんか、ひどい内装業者に騙されて手付金を持ち逃げされてもうダメだって思った時も、動物好きの地元の内装屋さんに格安で工事してもらったり。みんな助けて助けられて人って生きているんじゃないかな」
ソファの上でサチコは丸くなり目を細めてウトウトしていた。由美は続けた。
「自分一人でなんでも出来る人間なんていないもの。人に助けられたらそれをまた誰かに返してあげるのが、恩を受けた者としての務めじゃないかな。ささやかでもいいから自分の出来る範囲で。但し人を見る目も養ってないとダメだけどね」
と言うことは自分は由美のお眼鏡にかなったということだろうか。苦労を重ねて大人になると人を見る目も自然と養われるのだろう。いや、少し違うと龍一は思った。やはり年齢や経験の前にその人の資質と人間性が基本にあるはずだ。その上に経験を重ねていって人としての厚みが増すのだと思った。年上だ経験者だというだけで、若い者に居丈高な態度をとる大人が実に多いことを、まだ五、六年の少ない社会経験ながら龍一は知っていた。
「ごめんね。ほんと、神島さんの状況も分からないのにずうずうしく押し掛けたみたいで」
「とと、とんでもないです。すごく助かりましたし、小鳥遊さんの言うとおりだと思うし、いい勉強になりました。それに、なんかとても嬉しいんです、こんなふうに見ず知らずの他人と心が通じ合えるということが。あまりうまく言えないんですけど。それに」
「それに?」
「さっきの恩を返すって話ですけど。僕、去年仕事で会社の売り上げにも響くような大きな失敗をしてしまって。全く自分一人のミスだったんです。それを僕の名前を一切出さずに会社に頭を下げた上司がいまして。全て自分の責任ですと。孝雄さん、あ、いや、鈴木課長というんですけどね。あとで僕が申し訳なくて課長に謝って、いつか仕事でこの恩を返します、と言ったら課長は、恩は俺に返さなくても良い、そのかわり将来おまえにも部下が出来るだろうからその時に部下に返せと」
あの時孝雄は、俺は上司として当然のことをやったまでだから気にするなと、くわえ煙草で高笑いしていたのを今でも鮮明に覚えている。由美が言った。
「たぶん、その課長さんも若い時にその時の上司か仲間に助けられて同じような経験をしたんだと思うわ、きっと」
由美は腕時計をちらりと一瞥し、眉間に素敵な皺を寄せて言った。
「神島さん、昨晩あなた、奥さんになるはずの人と昨日まで一緒だったとか言ってたけど。ベッドに横になってからも、『きい』がどうしたとか、うわ言みたいに言ってたわよ。『きい』って鍵のキーじゃないことくらいは理解できたわ」
龍一は頭の熱が下がったと同時に、心の底辺も冷え冷えとしているのを感じた。
「いろいろあったみたいね。これ以上詮索するつもりはないわ。あっもうこんな時間。クリニックに戻らなきゃ。これでも開院以来結構繁盛してるのよ。病院が繁盛するのって、動物にとっては良くないことだけどね。昨日の診察代は一度クリニックに来て精算してね。いろいろ書類を作らないといけないから」
そう言うと由美はソファに向かってサチコちゃんまたね、と言って立ち上がった。その時に艶やかな黒髪が揺れて、豊満な胸元に着地するのを目の当たりにした。玄関先で見送りながら龍一は間抜けなことを言った。
「あ、せめて今日のお昼代を」
「何言ってんのよ、あれは私の奢りよ。今度倍返ししてもらうからね。生ビール三杯でどうお?」
小鳥遊さん、と言いそうになって思い直した龍一は勇気をふるって言った。
「由美さん、了解です。今度ぜひ」
ドアが閉まったあとやるせない気持ちになった。つい昨日の朝、希伊が失踪して胸が締め付けられるような喪失感に苛まれているというのに、一方で目の前に現れた素敵な美人に心のどこかが落ち着きを失っている自分がいる。男の身勝手さを恥じると同時に、後者を肯定し受け入れようとする龍一だった。
しかし、希伊によって心に穿(うが)たれた穴は気が遠くなるほど大きく深く、今26歳の龍一がその後40を過ぎてもなお、その穴が少しも小さくなることはなかった。
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