「エ〜〜〜ッ、サッサア〜、エッサッサ〜!」
川崎市有馬中学校体育祭での男子生徒の名物演技「エッサッサ」である。
その昔日体大の大学生から伝授された伝統の演技である。
先日の土曜仕事を早めに終え、練習のグランドへ行く前に歩いて3分の有馬中学体育祭に寄ってみた。この一週間ほど体育祭の練習を盛んにやっていた模様。フレンズを卒業した子たちの何人かをちょっと見てやろうと思ったわけで。昔と違い入場者名簿に記入し、持参のカメラの申請も済まし校庭へ。子どもって体操着を着るとなんでこうも皆同じに見えてしまうのか。視力の悪さも手伝って誰が誰だかさっぱりわからんちゅうに。20年ほど前、幼稚園の運動会の徒競走の時に我が子をビデオに撮ろうとしても、遠くからだと他の子と全く判別がつかず、直感で我が子をレンズで追いかけ撮ったはいいものの、だんだん近づいてきた子は全くの他人だった...なんて記憶が蘇る。
運動会と侮るなかれ、筆者は男子の騎馬戦とリレーを見るのが大好きだ。単純に興奮するんである。自分の中学高校時代を想い出すせいもあるのか、アドレナリンが胸のあたりからふつふつと沸き上っちゃうのだ。逆に今もし、やれと言われてやりたくないのは「パン喰い競争」1位になるには日頃の仮面を脱ぎ捨てて、もの凄い形相で大口を開けパンに喰らいつかねばならぬ。逆に不幸にも最後までパンを喰いちぎれずに、後ろ手に紐で拘束された挙げ句、喰いたくもないアンパン相手にオタオタすれば、周りの失笑とも嘲笑ともつかないビミョーな笑いに囲まれながら、あろうことか係員にパンをくわえさせてもらい、無人のトラックを熱の冷めたゴール目指してヨロヨロ走らねばならぬ。こんな屈辱はないわけで。(故意に極端な論理を展開させましたでありまする(^^))
さて、中学校体育祭である。
男子組み体操も見応えあったけれど、昔と比べてどこか「真摯な気概」とでも言うべきものが感じられないと思ったのは、筆者が歳をくったせいだろうか。先の半ば伝統芸能保存的な「エッサッサ」も然り。筆者の息子の時代には男子全員のかけ声だけでも鳥肌立つような感動を覚えた記憶があるけれど。
遠い記憶。
息子が3年の時の体育祭。「エッサッサ」で朝礼台に登り指揮をとるのは全校男子生徒のリーダーたる証でもあり名誉でもある。その年のリーダーは、当時シニアで活躍していた鷺沼ヤングホークス出身の高井雄平くん。のちにヤクルト指名でプロ入りを果たした子である。一糸乱れぬ演技と中学生男子独特の大人になりかけオトコの大音声(だいおんじょう)が校庭に響き渡る。
雨だった。最後の男子リレーが始まった。
息子のJunnosukeは野球部でアンカーを務める。スタートの号砲。ぬかるみに足を取られながらも白熱の展開。Jの前の走者が不幸にも転倒。前のランナーとの距離がどんどん開く一方だ。やっとJにバトンタッチ。すでに勝負は終わっている。残り半周で誰もいない無人のトラックをそぼ降る雨と泥にまみれてひとり独走する。静かな衆人環視のもと自然と温かいがんばれの拍手がわき起こる。
最後の直線コース。息子Jは勝負を捨ててそれまでゆっくり走っていたのだが、ゴール間近で突然猛ダッシュにシフトチェンジ。
最後は泥のゴールにヘッドスライディングを敢行。すぐにすっくと立上がり、両手を天にかかげ、ヤツはあろうことかグリコのポーズを取りやがった。
会場は爆笑と拍手の嵐。
パン喰い競争のような屈辱を自分の胸の内で反転させ、逆に周りを味方につけるスキルというよりセンス。
大バカ野郎の息子だったが、父親としてちょっぴり誇らしげな気分であった。
今日は「遠い記憶」の話でした。
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