若い頃、作家椎名誠の小説に凝ったことがある。椎名誠はカメラマンを目指していたが、本好きが高じて書評誌「本の雑誌」の編集長になった。社長兼発行人は目黒考二。この人は更に本の虫で死ぬほど読書が好きな人なんである。若い頃本を読むことが仕事になったらどんなにか素晴らしいことだろうと夢想した結果、本を読んで感想を書いてそれを雑誌にして売る、という趣味と実益が渾然一体一石二鳥の、夢のような株式会社「本の雑誌社」を作っちゃったんである。
椎名誠がのちにこの目黒考二をモデルにして書いた本が「活字中毒者の地獄の味噌蔵」というもの。また、毎日会社へ行ってひたすら本を読むことで給料がもらえるという内容の、近未来的不条理小説も書いている。筆者、本当にそんな会社があったなら、とっくに転職しているであろう。
因に目黒考二は本名で、もうひとつ文芸評論家としての著名なペンネームがある。北上次郎。新聞や雑誌で必ず目にする名前だ。
さてこのところ「本」に関わるドラマや小説が多いと感じているのは筆者だけだろうか。「ビブリア古書堂の事件手帳」剛力彩+EXILE.AKIRAでドラマ化にもなった。
三浦しをんが上梓した「舟を編む」は同じく「本屋大賞」を受賞。出版社の辞書編纂部に配属された青年と周りの人物を描いた小説だ。映画化もされて今新作の部類でTSUTAYAに並んでいる。すでに筆者の次回借りて観る映画リストに入っている。
更に本がらみでこれ。
「図書館戦争」
なんちゅー魅力的なタイトルであろうことか。素人の映画評を見ると好評もあれば悪評もある。筆者には....とても面白かったんである。以下、TSUTAYAディスカスから。
有川浩の大人気ベストセラー『図書館戦争』シリーズを榮倉奈々と岡田准一の主演で実写映画化したアクション・ラブコメディ。監督は「修羅雪姫」「GANTZ」の佐藤信介。2019年(正化31年)に制定された“メディア良化法”による検閲とそれを実行するための武装組織“メディア良化隊”に対抗すべく、図書館が創設した防衛組織“図書隊”。高校時代に大切な本を目の前で守ってくれた図書隊員を“王子様”と慕い、図書隊に入隊した笠原郁。ところがそんな彼女を待っていたのは、鬼教官・堂上による地獄の特訓の日々だった。それでも男子顔負けの身体能力だけが取り柄の笠原は、堂上の過酷な訓練にも音を上げず、ついには女性初の図書特殊部隊(ライブラリータスクフォース)に大抜擢されるのだったが…。
法案可決された「メディア良化法」は子どもにとっての悪書を駆逐するなどという、現代の良識を遥かに超えた厳しい基準が設けられて、なんてこともない小説や絵本、郷土の歴史を綴った書籍まで、とにかく国家権力で武装したメディア良化隊が検閲という名のもとに本屋を襲い没収するのだ。これに対抗すべく組織されたのが「図書隊」。これまた武装集団であるから、この荒唐無稽さが良い。だから小説になり映画化もされるわけで。本を守る図書隊は敵であるメディア良化隊が発砲するまでは手を出してはいけない。このあたり、日本の自衛隊を揶揄してる匂いもある。また戦時中の日本帝国軍の言論統制や、現代中国のメディア規制をも彷彿とさせる。とんでもなく激しい銃撃戦で怪我人は出ても死者は出ないところを、リアリティーに欠けるなんて言っちゃあいけない。オトナの鷹揚さで観ることが寛容であり、かつ肝要というものだ。
全国数カ所の実在する図書館を借り切ってロケを敢行したそうだ。無数の本たちの美しい書籍の海を見ることが出来る。更に戦闘シーンはかなり上等なCGを駆使して仕上げてありなかなかのものである。
ただし難を言えば....。「オトナの寛容」を標榜しておきながら、舌の根も乾かぬうちに前言を翻(ひるがえ)すようで恐縮なんであるが。設計を生業とする筆者にはどうしても許せないCG表現を発見しちゃったんである。巨大な図書館のエントランスにある四角い柱は白い大理石を貼って仕上げてある。おそらくイタリア産のビアンコ・カララだろうか。ここでまた激しい銃撃戦が繰り広げられるわけで、石で仕上げた柱にバキバキとマシンガンの銃弾が当たり破損していくシーン。最初はCGうまいなあと思って観ていたが、その石が損傷する表現はガラリと崩れ飛び散る表現でなければいけないのに、まるで紙か薄い鉄板が剥がれるような絵になっていた。石なのだから障子紙が破れたような表現は絶対あり得ないわけでNGだ。
もうひとつ。自分の短足を棚に上げて言わせてもらえば、である。
主演の岡田准一は男から見てもカッコイイとは思うし、ドラマSPで武闘に開眼した彼のアクションも良いし、原作でも「身長の低いチビの指揮官」という設定であるから、小柄な岡田クンでも絵になっているから良いのだけれど。一点だけ役者としてこれは直したほうが良いと思うことがある。彼は少し猫背ぎみなんである。持って生まれた他人の肉体的特徴をつまびらかにするのは本意ではないし、全国の岡田くんファンを敵にまわすのはもっと不本意なんであるが、背筋をぴんと伸ばして演技すれば部隊長としての威厳にももっと輝きが増していたはずだ。
うむむ...、待てよ。今気がついた。
昔、筆者も配偶者から指摘されたことがあった。歩く姿が少し猫背だね、と。
アレはなかなか自分では気がつかないものである。ヤッベ、反面教師(^-^)
さて、本の話から映画の話、最後は猫背の話になってしまった。これらを総合して想い起こしたことがある。筆者の「夢」の話だ。
一度でいいからやってみたいコト。実現したい夢である。
風呂にお湯を貯めるのではなく、空っぽの浴槽に満杯になるまで子猫を数百匹ほど入れてのちに、筆者丸裸になってそっと入り、ミューミューミャーミャー鳴き声を聴きながら首までとっぷり浸かるという「猫風呂」をやってみたい。死ぬほど幸せな気分になれるに違いない。
もう一発。
風呂にお湯を貯めるのではなく、空っぽの浴槽に満杯になるまで小説を数百冊ほどぐしゃぐしゃに投げ入れたのちに、筆者丸裸になってそっと入り、畳んだ手ぬぐいの代わりに開いた本を頭の上に載せて、微かな紙とインクの匂いを酒の肴にし、好きな原作本を映画化したDVDを大画面で観賞する「本風呂」をやってみたい。天国に昇るほど幸せな気分になれるに違いないのだ。
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