2015年9月2日水曜日

模倣と独創のあいだ

「このエンブレム、いったい何?」

うーーーーむ、なんたることか、東京オリンピック2020エンブレム問題。
先日ここで偉そうに「もの申す」的なブログを書いたあと、更に連日のパクリ疑惑が噴出しちゃってから二転三転、とうとう今日取りやめの公式会見が18:00から行われた。筆者仕事で図面を描きながら、J-WAVEを消してNHKの中継に見入った。授業を中断してアポロ13号の月面着陸中継を視聴覚室で見た小学5年生のときのように。

「模倣ではない」天からの啓示を受けて全くのオリジナルなのに偶然似てしまったのか、それともドイツのタイポグラファーの展覧会を見に行き、それに感化されてヒントとしたのか、或いは部品と色と配置を変えたパクリなのか。何度も言うけれど「部品と色と配置を変えた」だけのデザインをパクリと断定するならば、世の中いっぱいあるんである。原作にリスペクトしつつそれを元にデザインすることは実に多いはずだ。今回は世界的なイベントであるオリンピックのエンブレムデザインということに加えて、あまりに「似ている」疑惑の対象となるアイテムが多すぎて、噴出しちゃったことがコトが大きくなった要因ではないだろうか。

何かを見てそれを参考にデザインすることを世間的に「パクリ」と非難されるなら、グラフィックデザイナーやファッションデザイナー、工業デザイナー、建築家、インテリアデザイナーなどはメシの食い上げである。要は程度問題なのだろうけれど、今回は意図的に似せたのか、偶然にも似てしまったのか、それは本人にしか分からない。「断じて模倣ではない」という言葉も、では模倣とは何か?参考にしたことを模倣というのか、明らかなパクリを模倣というのか。

今回は佐野氏はかなり分が悪い。デザイン業界では本人の言い分を理解し擁護する向きも多いし筆者も同じ傾向にあったけれど、やはり状況証拠からするとハッキリ黒とまでは言えないものの、かなりグレーゾーンだと思う。
これがもし、全くのオリジナルであったならば、偶然にも似てしまっていたのならばもの凄く不幸な出来事である。彼がとても気の毒に思う。だけどやはり....という感は否めない。
100年前ならともかく、今やロゴやマークなどのデザインは出尽くした感がある。クルマのデザインを例にとっても、街をゆくクルマ(特に小型車)の実に似たデザインが多いことか。マンションの設計でも似たようなデザインが多い。ここ数年は外壁のタイルの色を階層によって濃淡をつけたり、色分けして貼り分けるのが流行っている。筆者が身を置く店舗デザイン業界でも、海外の建築雑誌を参考にしたり、話題の飲食店へリサーチしに行って、そのエキスを吸収したりは日常茶飯、若い頃はそれが当たり前だった。
これらと今回のオリンピックエンブレム問題はもちろん同じ土俵で語れないのは承知の上である。

破棄し撤回....じゃなかった、白紙撤回。
これからまた公募するらしい。
雨後のタケノコのようにネット上に新エンブレムのデザインが氾濫しているらしい。筆者はその時見たことないがTVニュースで知った。ならばとネットを検索してみる...。

誰が作ったのか知らないが、少年野球「晴耕雨読」BLOGという何やら少年野球をテーマにしたブログらしいが、偉そうな「なんである」調の文体に加えて、時々私的なバカ話も書いたりしている、実に怪しいサイトなんである。そこにこんなデザインが載っていたんである。
このサイトの説明によれば制作者のデザインコンセプトは以下のようだ。
「バックの赤は日の丸ニッポンと情熱と太陽を表し、青のTOKYOのTの字は上に突き抜ける青空を、左の黒は地球の大地、右の黄色はその大地に射す明るい光、そして緑の丸はこれからの地球環境を大切にするエコの象徴を表現しました。
更にこの5つの色は五輪マークの基本である世界の5大陸を表す5色をそのまま用いております。
全体構成の説明をいたしますと、全体の四角を100×100mmとし、それを5分割するとひとつの単位は20mmになります。これら5色の図形は全て20mmの倍数で構成しました。Tの中央の縦棒の幅は全体の1/5の20mm、赤い円は直径80mm、緑は同じく20mmで四角の上辺から下へ40mmの位置に配してあります。黒や黄色は40×40mmの1/4円となります」

と、書いてあるではないか....。

ワカリマスカ?
騙されましたか?
そーなんである。このデザインは少年野球「晴耕雨読」のブロガー、筆者「T」が即興で35分で作ったもの。

エンブレムはまた公募するとニュースで知って、頭の中でいろいろ自分なりに試行錯誤。ならばいっそ皮肉を込めて今回の佐野氏デザインをリスペクトしながら「模倣と独創」のギリギリのデザインを考えてみた。佐野さんのTの文字をヒントにしたのは否めないが、これならばどうだろうか?たぶんベルギー博物館に訴えられるほど酷似してないし、ドイツの展覧会のデザインにはほど遠いし、佐野さんのエンブレムとも一線を画しているはずだと思う。
閃いてからすぐにスケッチブックに7案ほどを鉛筆でラフスケッチ、これに要した時間たったの5分。それから一気に興が乗り、ワールドカップVSセルビア女子バレーの熱戦を右目で応援しつつ、左目でグラフィックソフトを立ち上げてガシガシ、クリクリ、これの制作は30分。Wikiで五輪マークを引っ張ってきて、セリフ体(明朝体)の適当な2020TOKYOのフォントを配置した。但し後半の「1/5分割」の全体構成は真剣に考えて作ったものである。

もちろん遊びで作ったものだから精度もコンセプトもいい加減である。先に書いたデザインコンセプトなんかは、実は作ってからこの絵を見つつブログを書きながら後付けで考えたものである。てんでチンドン屋風でまるで国際コンペには向かないことは自明の理。ただしもっと色数を減らし、シンプルにすればもしかして....。なんて夢想してみる今日この頃なんであった。

もし公募が終わり、選考に残ったものがこれに類似していたら面白いではないか。
しかしたぶん、ネット上などですでに公開しているデザインは応募対象から外れるはずだ。だからこれを出すわけにはいかない。当選作がもしこれに類似していても筆者は訴訟は起こさないからね。
いや、待てよ。
そもそも即興で作ったこのデザイン、もしかしたら世界のどこかの、場末のレストランのマークなんかと似てたりして(^-^)
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