哀愁のヨーロッパ、ではなく晩秋の有馬地方なんである。晩秋というよりすでに初冬か。毎年この時季は一度は触れる銀杏いや、イチョウのことについて。
筆者の仕事部屋からは見事なイチョウ並木が見えることはすでに全世界の人が知っているわけで。まだ落葉の序盤戦だというのに、すでに今年も枝切りが始まったんである。筆者、イチョウの色、山吹色というか、鬱金(うこん)色というか、クロームイエローが好きなので、もう少し目の保養に残しておいて欲しかった。
仕事しながら窓外のその庭木職人の伐採作業を見る。ニッポンは誰かの仕事で出来ているわけで。
写真はイチョウ本体を強調するため、周囲を極端にボカしてある。これってまるで、TV番組で芸能人が自宅へ案内する時のロケ映像みたいではある。
下から半分まで進んだ。
作業を観察すると二人の職人が、はじめは二人でガッツリ刈り込んでいくのだけれど、半分を過ぎると一人だけが上へ登り、切った枝を下のもう一人に手渡し落下させるようだ。なるほど。上の梢になれば樹は細くなり二人同時には作業出来なくなるし、ましてや荷重がかかり危険でもあるからだろう。
植木職人二人、下で落下物の安全を管理する係、清掃車に黙々と枝を投げ込み処理する係、クルマの誘導交通整理二人の計6人の連携プレー。無死満塁の場面で内野間でのトリプルプレーで無失点チェンジみたいな気分。一本の樹を全部やり終えるのは30,40分くらいだろうか。通行人が下を通る時「通りま〜す!」と上に声をかけると、上の職人は枝を投げ落とす作業を一旦中止する。安全を最優先した世界に誇るニッポンの仕事である。それ以外は何も言わず黙々と作業を続ける。筆者の知る建築現場などもそうである。男は黙って仕事するんである。
いよいよ佳境に入って来た。
てっぺんの最後のひと切りになった。
ぎゅんぎゅん、ぎょりぎょり、ぎーこぎこ。
スポンッ。
すっかり丸坊主。生きてるだけで丸儲け。
そんなことないやろ、どれどれ...あっホンマや。
先々週床屋を終えて店を出てきた己の頭を思い出してしまった。
樹を伐採するという、言わばマイナスの引き算の仕事をすることで、逆に地球の一部にプラスの要素を加えていると思った。いわば引き算の行為でひとつのモノを作り上げているわけで。二律背反のように見えて実は一心同体なんである。
建築現場の作業や町工場の金属部品製造、将棋の駒を作る様子などを見るのが好きで、うっとりと眺めてしまうんである。自分はナニかのモノを作る事がつくずく好きなのだと、今改めてそう思う。だから筆者は今の職業を選んだのだろう。もっとも筆者のそれはモノを作るための計画図を描くことではあるが。ガキの頃から絵を描くのが好きでモノを作るのが好きで、創造と想像と、加えて夢想と妄想が大好き少年だった。
この日は所用があってバスでセンター北方面へ繰り出した。近くのスーパー前のバス停にて。
黄色く染まった街路を眺めていると、エルトン・ジョンの「グッバイ・イエローブリックロード」のイントロ部分がいきなり立ち昇って来る。
ひーらり、ひらひら、ひらひらり。
ベンチに二葉のイチョウが舞い降りた。
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