2011年6月22日水曜日

「お〜いっ!ボクっ!」

今日こそは日曜のBチームの試合速報ならぬ、試合遅報をと思ったのだけれど、つい目の前で体験した話を書いてみたくなるのは、アダムとイヴの時代からの人類共通の性(サガ)なんである。てなことで、今回もフレンズ関係者にはゴメンナサイ。

二人の子どものお話。
午後自宅を出て打合のため外出した。蒸し暑い中ブラックスーツに身を固め近くのバス停へ。ほどなく歩いていると、目の前の小学1,2年生とおぼしき坊主頭の男の子が、何を思ったかいきなり舗道から車道へ降りて、後ろも顧みずズンズン車道のセンターライン近くまで歩いて行くではないか!小生後ろを振り返ると幸いクルマは一台も来ず、とりあえず安堵のため息。でかいリュックを背負って、てれんこてれんこ歩いているのを見て小生もすかさず車道に飛び出し、声を掛けた。オトナとして当然の成り行き。
「お〜い!ボクっ!」「危ないからこっちへおいで。ちゃんと舗道を歩かなきゃ!」
瞬時に心の中で(...舗道を歩かないと補導されちゃうぞっ...というダジャレが浮かんで言いそうになったけれどそこはグッとこらえたわけで)
かの小学生は小生を振り返り(ナニ言ってんだこのオッサン?)みたいな色を瞳に浮かべて知らんふり。
「おい、ボク!こっちへおいで」と言いつつ車道の真ん中へ歩み寄り、彼の肩に触れようとしたら、急にきびすを転換、舗道に無事帰還。
(...ったく、世話の焼けるやっちゃ。結果オーライだから、まっいっか...)と独りごちて駅へのバスに乗り込み車中のヒトとなったんである。

ところが今日は子どもの話はこれで終わらなかったんである。
ここで関東圏の読者なら理解出来ようけれど、全国の方にはちょっと説明がいるかも。東急田園都市線は中央林間から途中、たまプラーザ、鷺沼という駅を経由し東京渋谷まで。更にそのまま東京メトロに乗り入れ、最長で東武動物公園まで行けちゃう超長〜い路線。鷺沼で電車に乗った小生。車内はガラガラ、座席は埋まっているものの、立っている乗客はほとんど皆無状態のアンニュイな午後4時。座席には母息子とおぼしき親子連れの隣が空いていたので子どもの横に座った。持参の水筒のネームプレートには「いちねん」の文字が。少年はグッタリ熟睡、安眠を貪り左右に舟こぎ状態だ。その子を横目でチラ見すると私立小学校のワイシャツを着ており、土ぼこりであちこち茶色のシミが。(...おお〜、男子たるものこうでなくっちゃ。もっとシャツを汚してガッツリ遊べよぉ...)

しばらくすると、とうとう小生の脇腹あたりにコテンと寄りかかり、小さな右手は私の太ももの上。ここでオヤジは夢想するわけで。
(...う〜ん、これが可愛い女子大生かOLか、またはそれなりにイイ女だったらなあ。大喜びで肩でも胸でも貸すのだけれど...)しかしながら、小生の子どもが小さかった頃を想い出し、少年の頭の熱を脇腹に感じつつ、そう悪い気分ではないことに気づいた。(よしよし、寝ろ寝ろ好きなだけ)
少年のすぐ隣の母親を見ればケータイメールに夢中で、他の乗客に我が子が迷惑をかけてることにも気づかず...。(...イマドキの母親はこれだからなあ...)と心で思った。
そうこうしてるうちに駅はどんどん通りすぎ、轟音を発しながら東京渋谷方面へ驀進、溝口駅へ。
少年は微動だもせずコンコンと眠りつづけている。隣の母親がやっと席を立ち上がった。小生は当然こんなセリフを期待したわけで。
「あらまあ!すみません。ほらほら、○○ちゃん、起きてっ、降りますよ」みたいな.....。
あにはからんや、その女性はケータイを手にすーっと電車を降りてしまった。
全くの他人だったのである。
瞬時に小生の頭の中のハードディスクがフル回転。理化学研究所のスパコンに負けないくらい秒間8兆億のスピードで。
(....こいつ一人で電車乗ってたのか!?乗り過ごしてはマズイことになる。そもそも鷺沼のような郊外から都内の有名私立に通う子はいるものの、東京の自宅から神奈川の小学校に通う子はまずいるまい。こいつヤバイな。起こさないと...)
「お〜いっ、ボクっ!」「大丈夫か?そろそろ起きたほうがいいんじゃないのか?」
ところが全く反応なし。仕方なく頭を軽く叩いたがダメ。ええい、仕方ない、ほっぺをつねった。周りは折悪しく女性の乗客ばかり。怪訝(けげん)そうな顔でこちらを傍観。なんと思われようが構わない、小生の直感を信じてこの子を起こすまでだ。
うっすら目をあけかけた。
「おい、もう起きたほうがいいんじゃないの?降りる駅はまだか?」
少年「むむむ....※◉☆☂❖☀☃〠⁂♬....はい...むにゃやむにゃ....」
半信半疑ながら少し安心。寝過ごしてはいないようだ。ならば二子玉川あたりで降りるんだろうと勝手に想像す。また少年は瞼のシャッターをガラガラドッシャン、更に深い深い眠りの渕の辺に落ちた。
二子玉川到着。ヤツは降りない。寝てるから降りようもないのだけれど。
東京に入り地下へ潜る。
さすがに焦った。(...俺が渋谷で降りてもまだこんこんと寝ていたらどうしよう。このまま東武動物公園駅まで行ってライオンに食べられたらあまりに可哀想だし...)
もう一度起こしにかかった。「おいっ、ボク!起きなよ...こらっ、起きろってば!」
大声を出した。先ほどより数倍に膨れ上がった乗客から数十倍に膨れ上がった非難の目線を感じつつ。(...このオヤジ、小さい子にいったい何をするのかしら。変なオヤジ!...)的な視線が後頭部にぐさぐさ突き刺さるのを感じつつである。
衆人環視のもと、私は今一度自分を信じることにした。やっと少年を起こすことに成功し、その虚ろな目に問いかけた。
「キミ、どこのえきでおりるの?」「まだだいじょうぶなのか?」
少年「....♤⁑⌘@☎▼◐...むにゃむにゃ...たまぷらーざえきでおりる....」

やっぱりだった。小生が電車に乗った時点ですでに寝過ごしていたことになる。
次はすでに駒沢大学駅。シャキッとさせて事情をのみ込ませ、次の駅で降りて反対側の電車に乗りたまプラへ戻るよう言って聞かせた。
「おじさんの言ったことワカルか?」
「...わかんない...」...........(あちゃ〜!)
私も人の親。よっぽど駒沢で一緒に降りて、ホームを乗り換えて電車に乗せてやることも脳裏をよぎらなかったわけではない。
が、しかし。これもひとつの少年の試練だと思えば、甘やかすことになりかねないわけで。うむ。むしろ可愛い子には旅させよと言うではないか。このまま路頭に迷い朽ち果てるわけじゃなし。ましてや最悪のケース、シマウマに食べられちゃうことは回避できたわけで。
眠い目をこすりつつ少年がすっくと座席を立ち、電車を降りる間際、声をかけた。
「気をつけて帰るんだぞ」
「ハイッ!」
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