前日土曜の県大会敗退から、傷心の旅路を終えて郷里に帰ったフレンズナインであったが、その午後も猛練習に明け暮れて翌日の宮前秋季大会に燃えていたのだった。
さてその翌日の日曜なんである。秋季大会ブロックリーグ最終戦、VS南野川ブルーアローズ。ここまで互いに3勝0敗同士、1位抜けを目指しての対戦なんである。ブルアロ率いるは闘将Yoshida監督。土日以外でも平日毎朝のランニングなどの過酷な練習は他の追随を許さない強豪なんであった。
ライトRikoの元気溢れるプレーで大喜びのAdachiオヤジなんであった。なぜか両手でパチンコ台のハンドルを回すようなジェスチャーをしていたんである。
ネット裏では運営のOhmoriオヤジが居眠りぶっこいて...いやいや本人の名誉のために、偶然瞬きとシャッターを切った瞬間が重なった...に違いない。と、そう思う...たぶん...おそらく...かもしれない...パハップス、メイビー。
試合は2回表裏に互いに1得点す。フレンズはこの日先発マウンドのIchiyaの見事なツーベースを足がかりに、なんとか同点としたのだった。
丘の上の特別観覧席では天覧試合となった...違うか。3年前全国に行った代の今は中3となったレジェンドOB、RuiとHajimeであった。今は同じ全国屈指のボーイズに所属している。二人とも現フレンズのShohとAkiの兄貴でもある。Ruiはすっかり男らしくキリリとしたイケメンに、Hajimeは相変わらずの愛すべき童顔のままなんであった。
これも偶然である。ブルアロの控え選手のひたむきで真摯な姿と、それと対照的にノンビリポーズを見せる三塁コーチャーNaoya。ファインダーを覗きながら思わず笑ってしまった。Reina母、彼を叱ってはいけないぜ。単なる偶然なんであるから。こーゆー「単なる偶然」を見逃さずしっかり静止画に記録するのが、少年野球戦場カメラマンの真骨頂である。
回は4回裏Fの攻撃。ここまで実力伯仲と言うべきか、拮抗した展開で互いに1:1、安打数も仲良く1本ずつしかない。Ichiyaの力投が続く。しかしこの回はFにとってビッグイニングとなったんである。その口火を切ったのが悩める大砲、すっかり大人びて中学生かと見紛(みまが)うほどの体格になった主砲4番のHaruto。センター前へ幸先良い安打を放ち出塁、彼はこのあと大暴れすることになるのだった。
続くIchiyaが内野安打、敵失でRikoも出塁、するとManatoが持ち前の選球眼で..ではない今度は痛烈なタイムリーツーベースで2得点し逆転に成功。更にトップへ戻ると主将Shohのこれまたあわやホームラン、レフト後方の斜面を直撃する特大のタイムリーツーベースでManatoも帰還し追加点、この時点で1:5と点差を広げたのだった。
気がつけば二死満塁であった。打者一巡し打席に立つのはこの回反撃の口火を切ったHaruto。筆者は肉眼で観る普通の人と違い、その場面は小さなファインダー越しにしか見えてこない。大局が見えない分、逆にレンズを通して人には見えない詳細を知ることもあるわけで。Harutoの表情は何かが吹っ切れたような、冷静な姿がそこにはあったように思ったのだった。まるで孤高の野武士のような。「孤高の野武士」うーむ、我ながらうまいことを言う。
初球だった。筆者はいつも打撃動作に入る瞬間にシャッターを切るのだった。そうすると時差があってちょうど打った瞬間が画像に収まるんである。カメラをやってる人ならばご理解いただけるだろう。Harutoは初球にも関わらず迷わずバットを振り抜く。手応えがあった。すぐにカメラを放棄し肉眼で打球の行方を追う。夏空に天高く舞い上がった白球はぎゅんぎゅん飛距離を伸ばし、中堅手も途中で追うのをやめた。本塁とセンターを直線で結び、その線分を延長した先に緑の大海原があった。生い茂る樹々の葉を蹴散らすように、そこへ白球が吸い込まれたのだった。第一公園での満塁ホームランは数年に一度の快挙ではないだろうか。
短い夏を謳歌して盛大な合唱を繰り返していた蝉どもが、突然のミサイル着弾に一瞬鳴き止み静寂が場内を支配する。すぐに爆裂音が聞こえてきたのは決して緑の海からではなく、フレンズの大観覧席からであった。ベンチ、父母ともども拍手喝采、狂喜乱舞なんであった。母はもちろんのこと、普段Harutoには厳しい態度で向き合っているオヤジ、B監督のMaedaさんもきっと頬を緩めていたんび違いない。
Harutoの本塁打は今年初ではない。遠征先の小学校などで打っている。しかしこの第一公園球場で放つホームランは他のチーム選手にとっても特別だろうと思う。地方大会ではなく甲子園でのホームランを打った高校球児のように。
AkiもそうだがHarutoも真面目でシャイな奴だ。手荒い祝福にも粛々と照れながら甘受していたのだった。前日の悔しい負けを払拭して余りある、実に溜飲の下がる思いだった。
試合は1:9でFの勝利だった。チーム事情もあったであろうブルアロナインも頑張った。本来の実力を発揮していれば違った結果もありえたかもしれない。試合後談笑する両監督。FのItoh監督も前日の敗戦は相当ショックな様子だったが、今日は晴れて笑顔になったのだった。
このあと余った時間でOBのRui、Hajimeも加わり少し練習したんである。合同練習で第一公園を使えることはあっても、フレンズ単独でこの「宮前の甲子園」を存分に使えることは夢のようである。普段から第一や第四を恒常的に使用できるいくつかのチームにとっては想像できないくらい贅沢で嬉しいことなのだ。ましてや今のフレンズは有馬小では体育館工事のために、来年春までフルスィングの打撃練習が困難な状態なんである。その鬱憤を晴らすかのように長打を連発、伸び伸び欣喜雀躍の子ども達であった。
せっかくなのでRui、Hajime兄弟のツーショットを中心に写真を撮ってみたわけで。
日本国中今は寄生虫なんであった。日本国内にサナダムシが蠢(うごめ)いて....んなわけない。寄生虫ではなく帰省中。そんな方も多かろうと想像す。筆者は盆休みがないのだけれど、偶然この週は暇なんであった。クライアントに図面を送っても返信がないわけで。「便りがないのは無事な証拠」今週は突然の仕事が舞い込まない限り、のんびりできそうである。
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