2017年10月23日月曜日

俺の「ブレードランナー」

1982年ブレードランナーが実に35年ぶりに続編が公開される。「ブレードランナー2049」なんである。日本では今週の27日に封切りであるが、すでに米国で公開されているその観客動員数は予想外に低いものらしい。一説によれば女・子ども向けではないこと、40、50代以上の男性にファンが多く、若い人にはピンとこない...etc。筆者50代の男性である。しかも「一番好きな映画は?」と訊かれれば「ブレードランナー」と即答出来るほどのファンなんであるからして、世間の評判なんてどうでも構わない。あの映画の続編が観られるというだけでも幸せを感じてしまうんである。ロードショー期間には絶対映画館へ行って観たいと思うわけで。映画館なんてもう何十年ぶりだろうか。最後に映画館へ行ったのはいつの頃だろうか...覚えてないくらい昔である。「ET」か「冷静と情熱のあいだ」かリュック・ベッソン監督ジャン・レノ主演の「WASABI」だったか。

大昔この映画をVHSのビデオテープで借りて以来、ビデオテープ1本とDVD3本持っている。「劇場版」「完全版」「ディレクターズカット版」「ファイナルカット版」などとよくわからんバージョンがたくさんある。原作小説フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」も読んだけれど、あまり覚えてない。毎年1,2回は観ている映画なんである。ある日突然「ブレードランナー観たくなった症候群」が発症すると、いてもたってもいられず観ちゃうのが常。今回は続編新作公開とあって、昨晩腰痛をこらえながらまた観たんであった。これで何十回観たであろうか。全然飽きないんである。

今回作はリドリー・スコットは監督ではなく製作総指揮になったが、ハリソン・フォードは健在である。一度聴いたら忘れない音楽のヴァンゲリスは今回はどうなんだろうか。ブレードランナーのテーマ曲はiPhoneにも入っている。劇中でH・フォードがジョニ黒(?)を飲むシーンで使用されているロックグラスがどうしても欲しくて、昔ネットで調べたらイタリアの女性デザイナーのメーカー品だったことは判明したが、一個数万円するので速攻諦めた。今はAmazonでも売られている拳銃のレプリカを狙っているけれど、これまた高いので逡巡している。やはりこーゆーところが女性には理解不可能なんだろうと思う。

ブレードランナーは近未来SF映画の金字塔と言われ、のちの多くの映画に多大な影響を与えた、カルトムービーの真骨頂。オカルトではない、カルトである。コアな熱狂的ファンがいる映画なんである。フィリップ・K・ディックの設定は忘れたけれど、映画は35年前に作られて、舞台設定は2019年。まさに今から2年後の地球なんである。ざっくり言えば多くの人間は地球以外の星へ移住したが、酸性雨が降りしきる荒廃した地球に残った人もいる。タイレル社によって造られた人造人間=レプリカントは超人的な肉体能力を持ち、宇宙間での過酷な労働を強いられていた。彼らは数年経つと感情が芽生えて反乱する恐れがあるため寿命が4年とプログラムされている。それに気づいたレプリカント数人が地球へやってきて、タイレル社へ乗り込み寿命を伸ばせと脅迫する。それを阻止し未然に抹殺する専門刑事班がブレードランナーと呼ばれ、その一人の凄腕刑事がH・フォードなんである。これだけだとまあ、SFではありがちなお話ではあるけれど、35年前から地球環境への警鐘を鳴らす炯眼(けいがん)、ラストシーンでは命の尊さや、人としての感情が芽生えたレプリカントの優しさに心打たれて、筆者は最初観たとき、はからずも頬を熱いものが伝って落ちた。昨晩もまた涙しちゃったんである。レプリのボスを演じたルトガー・ハウアーの鬼気迫る演技、またショーン・ヤング演ずるレイチェル(レプリカント)とH・フォード演ずるデッカード(人間?賛否両論)との禁断の恋物語でもある。

何の脈絡もなく大好きな映画ブレードランナーについて駄文を書いてしまった。一個一個のシーンについて語れば枚挙に暇(いとま)がないからもうやめる。
う、うううっ....。「ブレードランナー2049」が待ち遠しい限り。しかし明日から某クルマメーカーショールームの設計の仕事が入っていて、映画館へ行く時間が取れるか心配なんであった。

...........
話は180度変わっちゃう。
昨日(日曜)は台風の嵐が吹きすさぶ中、有馬中学へ選挙投票に行って来た。豪雨の中仕事で外出するのは大嫌いだが、のんびりと時間に追われず雨や風を感じながら散歩したりするのは決して嫌いではない。深刻な身の危険を感じない限りは筆者、台風が思いのほか好きなんである。地球が生きていると肌で感じることが出来るからだ。

帰りがけに中学校から西有馬小スタジアムを俯瞰する位置から、iPhoneで写真を撮った。
グランドはおよそ野球は出来ない状況だったが、かろうじて水泳なら出来そうなくらい水浸しなんであった。

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2017年10月22日日曜日

新しい命の誕生

ここ数日の「日々雑感」なんである。
小説の「あとがき」的な本編を書こうとするも、ある程度気合いを入れないと書けない案件ゆえ、日々の雑務に追われて怠惰に過ごしていた今日この頃なんである。オムニバス的なブログになること必至。

1...
筆者の仕事部屋は汗と涙と泥とヘドロと煙草のヤニにまみれて、昔リフォームした時の面影はなく、壁の白かったクロスは「オフホワイト」どころか「限りなく透明に近いブルー」じゃなくて「限りなくカフェオレに近いベージュ」になっていたんである。ネットでリフォーム料金を調べてそろそろかなと覚悟していたんであるが、ふと思い立ち180度発想転換し経費節約も含めて、自分でDIYすることにしたんである。近くのコーナンで920巾15m巻きのクロスを2本購入し、原チャリで超低速走行でヨロヨロしながら持って帰った。翌日は一日空けてクロス貼りに挑戦。しかしその朝、数年に一度の割合でやってくるぎっくり腰に近い腰痛を発症。でも今後の予定を鑑みるとどうしても今日改装をやっておきたい。腰をかばいながら狭い部屋のデスクを三台移動しつつ、リビングに行ってクロスを2400ミリに何度もカット、アルミ脚立に上り下りすること数万回(ウソ)、やっと壁を貼り終えたのは夜だった。おかげで「限りなくホワイトに近いオフホワイト」に仕上がったわけで。清々しい気持ちで仕事に邁進出来そうだ。
しかし、なんである。
腰痛が悪化したのは自業自得、自明の理、火を見るよりも明らか。翌日は腰痛の悪化に加えて普段使わない筋肉を酷使したせいで筋肉痛も併発。ベッドから起きるのにゆっくり一分くらいかかる始末。立っているぶんには良いのだが、一旦椅子に座ってから立ち上がるのに激痛が走る。何かに掴まらないと立てない状況、挙げ句、靴下もパンツも立ったままでは腰が曲がらないので座ってでないと出来ないんである。乳幼児が初めて掴まり立ちをしてヨロヨロ歩くみたいな悲惨な状況なんであった。
結論。クロス貼りは素人がやるよりは業者に任せたほうが良い。しかし、意地でも明日日曜は天井のクロス貼りに挑戦。
たぶんブログで筆者の仕事部屋の一部写真を公開するのは初めてだと思う。天井とカーテンレールはまだヤニにまみれたままだけど。

2...
土曜日はQueens及び宮前連合、ヤングの川崎秋季大会。土曜の朝は6:50にAyakaの父母、Kurashige号が迎えに来てもらえる。先週も同じ状況で246をひた走り多摩川へ向かったのだが、途中で雨で中止の連絡網が入り、Uターンしたんであった。さて今回は。
苦手な早起きをして滝行を敢行し身を清めていざ多摩川へと、戦々恐々と連絡を待っていた。ほぼ予想通り雨で中止であった。実は少しほっとした。腰痛が悪化して歩くぶんには問題ないものの、立ったり座ったりがヤバい状況で、Q+連盟広報として秋季大会のカメラマンの責務を全うできるかどうか不安だったんである。ましてQ関係者に気を遣わせるのは本望ではない。
でもやはり雨で流れて残念である。なぜなら土日ともに中止が決定したので、準決、決勝は11月に延期となり、そのぶん、各チームの連合参加5年生がまた引っ張られることになり、新チーム始動に影響があるわけで。そんな中、連盟事務局Uekiさんからここ数週間の雨による決行、中止の是非のメールが嵐のように飛び交うに加えて、今日事務局の至宝Nishimuraさんからも連絡が入った。新人戦も一週間延期になったんである。それは5年生が連合に取られて新チームによる練習があまり出来ていない、或いは全く出来ていないから、少しでも各チーム事情に配慮した連盟の英断なんであった。
広報としてささやかな任務を果たしたい。すでに各チーム事務局や監督などには連絡が回っているはず。
●川崎秋季、準決、決勝は11月初旬の三連休にて実施。(その間市長杯があるため)
●宮前クラブとJrジャイアンツとの練習試合もその期間に予定されていたものの、今後の調整によって決定。
前述のように新人戦は一週間延期となった。
ここは敢えてNishimuraさんからのメールをコピペ引用したい。

チーム各位

お疲れ様です。
雨天続きで11月5日から開催予定だった新人戦を一週間延期します。
理由:川少連大会が今日・明日と延期になり、
11月初旬の3連休のうちの2日間で実施されることになりました。
5年連合の選抜チームに選出されている選手が、
自チームに戻って練習する機会が、極めて少ないか全く無いかのためです。

開幕は11月12日(日)となります。
自チーム内で共有してください。
よろしくお願いします。


事務局 Nishimura

3...4...
日々雑感的ブログ的ネタ的には、筆者の愛してやまない映画「ブレードランナー」の話や、
筆者の4人目のマーゴ誕生の話やらあるんであるが、腰痛を考えて今晩は就寝しちゃう。

金曜早朝に息子夫婦に第二子が生まれた。陣痛から12時間後の出産。人間も動物も新しい「命」の誕生には無条件で思わずニッコリしてしまうのは筆者だけではあるまい。
今日土曜日、本来ならQueens+5年連合に行って、午後は期日前投票をしに区役所へ行ってからマーゴを見に行く予定だったけれど、一日フリーになったのでゆっくりマーゴに会いに行ったんである。
赤ちゃんのあの独特の指の握り具合にはJは参っちゃうのであった。
兄となった3歳児のYuugaは産院で嬉しげに飛び跳ねていた(^-^)
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2017年10月18日水曜日

小説「月に降る雨」あとがきのまえがき

※小説「月に雨降る」の最後まで読了されてない方は、このブログを読む前に小説のほうを読んでからここを読むことをお奨めします。
いわゆる「閲覧注意」、ネタバレが含まれますゆえ。

小説「月に雨降る」が脱稿したのだった。(脱稿とは原稿を書き終えること)
この素人小説の「あとがき」を書こうと以前のブログで宣言したは良いものの、はて、どこまで書けば良いのか素人ゆえに分からないんである。ネタバレの内容まで書いて良いものかどうか。普通の小説家は書かない。なぜなら、小説世界から一気に現実世界に引き戻されて、いわゆる「興ざめ」になってしまうから。

パソコンではネットで無料の原稿用紙ソフトを探しDLして書いた。400字詰め原稿用紙、もちろん縦書きである。SNSでは横書きが当たり前だけれど、小説を書くならば絶対縦書きでないとダメなんである。パソコンで原稿用紙に縦書きで書いてのちに、テキストファイルソフトに横書きでペーストし、更にそれをブログ投稿画面でペーストするという、信じられない手間をかけてアップしていたんであった。
400字詰で約300枚だった。

ゆくゆくは小説投稿サイトに掲載を考えているので、この文章を校正しなければならない。この校正作業は書いてしまってアップしてからの作業だから正確には校正とは言わないかも。小説を出版し書店に並んだあと「すんませーん、こことあそこ文章変えます。それにここも誤字脱字ありました」と言うようなものだ。この校正をするために筆者は文庫本と全く同じ体裁で出力したんである。A4サイズ縦書き縦43文字、横33行。これ一枚で文庫本の見開き2ページ分とほぼ同じ。概ね文庫本に換算して200ページ分。中編小説と長編のあいだくらいだろうか。
今は仕事の合間にこの用紙に赤ペンで校正チェックを入れているわけで。誤字脱字はほとんどないけれど、会話の言い回しや「テニヲハ」の間違い、削除するところ、書き加えるところetc、赤ペン満載なんであった。

で、「あとがき」を書く前に、自分の頭の中を整理する意味でも、今日改めて人物相関図なるものを手書きで作ってみた。普通は最初に作るのだろうけれど、筆者が相関図をメモ程度に作ったのは小説を半分近く書いてからだった。たぶんプロに言わせれば恐ろしい暴挙である。途中までは行き当たりばったり、筆が勝手に進むままに書いていたんである。「起承転結」や最後の落としどころも考えずに。途中からヤバいと気づきノートにあらすじを書き殴ってからMacのキーボードに向かうようになった。
というわけで、今回は「あとがき」の「まえがき」なんである。
「近い将来」と「さほど遠くない将来」の中間あたりで「あとがき」の本編を書く所存なんであった。
※図の鉛筆点線は登場人物が実際会っている関係性を示す。

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2017年10月14日土曜日

談笑談義談話、予報と予想

先週の川崎秋季大会の宮前勢の結果は既報のとおり。でもって、明日10/15準決勝でもし宮前が勝てば、次回連合決勝は6年も5年も全て宮前対決となるんである。過去にも優勝、準優勝を宮前がワンツーフィニッシュしたことがあったけれど、果たして今年は結果やいかに。
因に手元のYahoo!天気によれば日曜AM3時から雨がほいほい降り始め、そのまま日中ずっと70〜90%の降水確率でぎゃんぎゃん降っちゃうのであるが、果たして明日は結果やいかに。降雨量が試合是非の判断の鍵を握るかもしれぬ。

本日テレビ朝日の「陸海空のナスD」が好きで特番を観ていたけれど、二部開始まで1時間余裕ができたのでブログを書くことにした。だからちゃちゃっと行きたい。ちゃちゃっとチャーハンみたいに。それにしてもテレ朝ナスDの友寄ディレクター。笑いのセンスに加えてあの徹底した前向き志向、それに加え、世界の僻地の子どもたちに対する、真摯なジャーナリスト目線には新鮮な驚きを覚えた。更に彼の奥さんは一時期日本中の男性を虜にした爆乳セクシー料理研究家の妻があり、ますます羨ましい限りなんである。

今日はQueensとクラブJrの合同練習なんである。試合もやった。Qはそれなりの点差で負けはしたものの、勝敗よりも得るものが大きく収穫のあるゲームであったと思う。連合男子相手にミスも少なく打撃面でも外野へ長打をいくつも飛ばしていた。Sachikoは男子相手にレフトオーバーの本塁打も放ったし、投手面においても4人をテスト登板させ個々のピッチングの良し悪しを見極められた成果があったと思う。

Miyauchi母と、ダンナがいかに西島秀俊と似ているかの談笑、Jinushi父と会長の多摩川高層ビル合成写真の談義、Yoshikawa母とはダンナたちの「熊に注意」で談話。楽しくて嬉しい限り。

クラブJrのオヤジを撮る。
28番コーチはベテランOhtsukaさん。ウルフのOgasawaraさんはアメリカンノックをやっていたが、そのノック姿は名将父のOgasawaraさんを彷彿とさせるほどフォームが実に良く似ていた。フレンズからは小説「月に降る雨」の唯一フレンズからのモデルになったOhshiroオヤジ。小説では「大乗寺義満」という名前で出演している。これ、本人は知らない。
思えばこの画はいったい、なんということでしょう。
Ogasawara、Ohshiroの両氏は、高円宮賜杯全国大会の昨年三位と一昨年ベスト16のマウンドに立った投手、Taiyohくん、Ruiの父、その二人なんであった。

雨まじりのベンチはすっかり水分を吸収し、雨が上がった今でもじっとりと湿っていたんである。筆者少し座っていたが、ほどなくして順々とかつ、潤潤と、ジャージを攻め始めついにはパンツまで浸食しはじめるんであった。じっとりピタピタなパンツになっちゃう。なので試合中誰もベンチには座ろうとしないのだった。臨時スコアラーTanaka母も途中から立って記述する。

男は仕事が第一である。晴海に新装開店した店を持つ監督Koshimizuさんは、今年なかなか公式戦にベンチ入り出来ない。本人の忸怩たる思いは以前焼き鳥屋でサシで呑んだ時に十分知っている。Sohma会長もなんとかして土曜にQueensの公式戦が入るよう、切に願ってやまないのである。「Koshimizuさんが監督じゃないQueensはQueensじゃねえよ」と周囲に公言して久しい。
たとえ監督不在の試合であっても、それは普段の練習で、ひたむきな監督の指導の魂が宿っている試合なんである。Q選手も父母たちもそれは十分理解していると筆者は思うのであった。

先人たちはうまい事を言ったものだ。
「秋の空と女心」
明日は十中八九、十人十色、十年一日、七転八倒、七転八起、七難八苦で雨だろうけれど、予報は予報、予想は予想、どう荒天が好天に好転するか分からない、まるで女心のように、或いは猫の目のようにクルクル変わるのが常だから、予報の予想をするのは、もう、よそう。
明日はがっつり苦手な早起きをせねば。


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2017年10月11日水曜日

小説「月に雨降る」53最終回

希伊は迷わず頷いて、にっこり笑って返した。
「はい。こんな私で良ければ」
しかしほんの少し顔を曇らせながら続けた。
「でも、すぐには」
希伊が迷うのには訳があった。今の店をどうすればいいのか。
「この店のこと、ここでの生活のこと。一回リセットしなければいけないわ。そう簡単にはいかないよ」
それは龍一にも十分理解出来た。共同経営なら尚更複雑だろう。龍一は言った。
「うん、物理的に難しいことはいっぱいあると思う。たぶんアライグマがこれからロッキー山脈を越えようとするくらい気が遠くなることだと思うよ」
「私はアライグマかいっ」
「うん。ただし可愛いやつ」
「だったら許す」
「うちだって息子と娘に話さなきゃいけない。でもこれはたぶん、二人とも了解してくれる自信はあるんだ。実は息子にはもう話してあって、あいつ生意気にも希伊に会ってみたいなんて言ってるくらいなんだ。家が狭ければ買い替えを考えてもいい。うちは大丈夫だと思うけど問題は希伊のほうだね」
少し考えて希伊が言った。
「この店は結構順調なの。売り上げも安定してるし。でね、もう全然思いつきだから、現実味がないかもしれないけどさ」
「うん、どうした?」
「あのね。東京に金沢のこの店の二号店を出すっていうのはどうかな」
「ほう」
「ここ半年ほど前から金沢にもう一軒店を出そうかって考えてたところなの。結婚してリュウと子どもたちと一緒に住みながら、金沢じゃなくいっそ東京に店を出すの。リュウの住んでる街の近くでもいいわ。東急の田園都市線て言ったよね。金沢のここは人を雇ってちゃんと維持しながら。翔子さんとじっくり今後のことを話さなきゃいけないけどね」
「シェンロンの東京支店か。めちゃくちゃ大変だけど、逆に面白そうだな。軌道に乗ったらゆくゆくは小さくてもいいから、法人化したほうが良いかもね。金沢と東京と神奈川を行ったり来たりするわけだ」

おそらく相当な犠牲を伴う冒険かもしれないと龍一は思った。けれど自分が会社を辞めて金沢に行けるはずもない。四十を過ぎた龍一にとって、今の仕事は脂がのって良い時期を迎えていた。難しい仕事ほどモチベーションが高くわくわくした。子どもらも転校となれば絶対嫌だと言うに違いない。結婚し自分の家へ来てくれるなら、希伊の望みは出来るだけ叶えてあげたい。龍一は続けた。
「すごく大変なことだと思うよ、絶対、想像以上に。予定外、予想外、想定外のことがいっぱい降りかかってきてさ。資金のことや物理的なことや、なんやかや」
希伊は上気した顔で龍一を見ていた。
「でもさ、俺もそれに乗った。一緒に頑張ろう。東京店の設計は俺に任せてくれ」
「ありがとう、リュウ。わたしも頑張る。それよりもまず、翔子さんと話をして、そしてリュウのお子さんに会いに行かなきゃね。あの頃は子どもや結婚に対して頑(かたく)なだったけど、今は子ども大好きだから」
「うん。当分は俺が週末金沢へ来て相談にも乗るし。たっぷり時間をかけてベストな方法を二人で考えよう。あっ、今度家族旅行がてら子らを金沢に連れて来て紹介するっていうのもいいな」
二人はソファの上でもう一度きつく抱きしめあった。

ふと龍一が言った。
「話が違うけどさ、ここの店名『シェンロンの背中』って、どういう意味なの」
希伊はにっこり笑って言う。
「あっち向いて」
「えっ?」
「いいから私に背中を向けて」
龍一が言うとおりにすると、背後から希伊が柔らかくしなやかに抱きついてきた。
「一緒に住んでた頃から私、こうするのが大好きだったの憶えてる?」
「え、ああ、そう言えばそうだっけ」
「あっ、こいつ、忘れてるな」
そう言うと希伊は龍一の肩に結構な力で歯を立てた。
「痛てて。こういう時は普通、甘噛みだろ」
希伊は笑いながら言った。
「私の実家って言うのはおかしいけど、自由が丘の奥沢神社は憶えてる?」
「もちろん。さっきも言ったように希伊がいなくなってから、俺が自由が丘に行った時に、かな江さんと一緒に話し込んだ所だ」
「そう、あそこ。そこの鳥居に蛇が絡みついてるのも知ってるよね。見ようによっては龍みたいな」
荒縄で編んだ蛇に模したものが鳥居の上に飾ってあることで有名な神社だった。あれを見て龍一は蛇じゃなく、不細工で愛嬌のある龍みたいだと思ったものだった....。
「ん、蛇みたいな龍?」
「そう、龍。ドラゴンボールに出て来るシェンロンよ。七つの玉を集めると願いが叶うっていう。そこから店名はシェンロンにしようって思ったの」
「龍の背中?」
「まだ気づかないの?龍一くん」
龍一は希伊の丸い豊かな胸のふくらみを背中に感じながら考えたが、答は手が届きそうで届かないような感覚だった。
希伊が言った。
「シェンロンは漢字で書くと?」
「確か、神様の神に、ドラゴンの龍で神龍」
あっと思った。
「そう、神島の神に、龍一の龍で神龍。シェンロンの背中よ」
希伊は一層力を込めて龍一の背中を抱きしめた。

                        了
................

全くの思いつきで小説風のブログを書いたのが、昨年の5月19日。ふざけて書きなぐっただけで次を書くつもりなど全くなかった。それが気がつけば53回分の小説に。400字詰め原稿用紙で300枚超え。

この小説をいかほどの方に読んでいただいてるのかは全く想像出来ないですが、今日まで辛抱強く読んで下さった方々には、本当に心から深謝申し上げます。一年五ヶ月の長期に渡りしかも不定期での連載ゆえに、大変読みにくかったことは想像に難くありません。

読者の方々、まことにありがとうございました。
(機会があれば批評感想など聞かせていただければ嬉しいです)

さて、近いうちにこの小説の作者の「あとがき」的な文章も書いてみたいと思うわけで。
「醜い言い訳」「悪あがき」「ネタばらし」に近いブログになること必至なんである。
2017年10月11日 記
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