2020年5月20日水曜日

当世渋谷見聞録

「不要不急」ではなく、「必要至急」の外出なんであった。日曜に神戸の親戚から急な連絡があり、月曜中に公的証明書類を速達で発送してくれというものだった。理由は以前から聞いていたので得心し承諾。印鑑証明などは宮前区役所まで行かずとも行政サービスやセブンのマルチコピーからでも出力出来ちゃうご時世だが、戸籍関係は東京にあるため所管の区役所へ出向かねばならない。戸籍謄本、抄本という名称は今は昔、現在では戸籍記載事項全部証明、個別証明ということになった。
筆者の本籍は渋谷区恵比寿なので、渋谷区役所へ。

久しぶりの渋谷であった。22歳頃から50台半ばまで通い慣れた渋谷は、かつては庭と言っても良いくらいの街である。夜のディープなゾーンを徘徊したこともあった。賑やかな人の多い街であることは日本中が知っている。がしかし、コロナ関連ニュース映像で見る「今日の渋谷のスクランブル交差点の様子」は、緊急事態宣言以前から毎日流れるようになった。外出自粛7割は達成したものの、8割には届かない、なんていうアレのビル屋上からの共同映像だ。確かに激減したことは間違いないが、筆者はこの日それを目(ま)の当たりに実感することになった。
ハチ公からセンター街方向。

月曜午前でもパラパラであった。いつものあの混雑を経験している者にとっては、体感的には9割減的な感覚なんである。報道で言うdocomoのデータ解析を疑っちゃうくらい。
交差点を渡りきって振り返ると、新築の渋谷スクランブルスクエアがそびえ立っていたが、曇天の灰色に霞んで生気が宿っていないように見えたのだった。実際商業ゾーンはコロナ閉館で中に入ることは出来ない。いつかはあの屋上のテラスに上ってみたいと思っていたんであるが、コロナ禍は収束に向かい終息を迎えた時までお預けなんである。(収束と終息は違うので使い方を間違ってはいけない)
109方向もすっからかんのガランガラン。たまたまクルマがはけている時に撮ったものだから尚更である。

区役所へ向かう百貨店などは軒並み休業閉館。若い頃は足繁く通った公園通り。20歳に作ったデザイン学校の卒業制作は、公園通りに出店を想定企画したウェスタンスタイルのレストランをデザイン設計したものだった。のちにパルコや東急ハンズやマルイを中心にした若者文化がここから発信されて行くことになる。公園通りを闊歩するだけで当時の若者にはステイタスだった。
海外の首都封鎖ロックダウンほどではないにしろ、やはりゴーストタウンなんである。スクランブル交差点の人の流れをニュースで見ると確かに激減したと思えるけれど、そこから各方面へ人は分散して流れるわけで、徐々に通りを歩く人数が減ってくる。すると激減具合がもっと如実に実感しちゃうのだった。
マルイからパルコ方面を臨む。

渋谷区役所も何年振りだろうか。公園通りを登りきる先に見えてくるのがNHKや渋谷公会堂、鶴をモチーフに設計した東京オリンピック前回大会の丹下健三氏の代々木体育館、etc。公会堂を左折するとそこに見慣れた建物はなく驚いた。渋谷区役所も新築ビルとなっていたんである。役所の混雑がマスコミで喧伝されていたので覚悟して行ったのだが、あにはからんや、フツーに空いていたのでサクサク手続きは進んだ。

帰りがけにスペイン通りを通ってみると、行きかう人は一人ふたりくらいである。いくら月曜午前と言っても異常な光景であった。店は眼鏡屋が一軒だけ開いていた。

iQOS関連で東急本店近くのメガドンキ渋谷本店へ。ニュースでも既知の通り店頭では各種マスクや消毒液が山積みで並んでいたが、客たちは一瞬立ち止まるも一瞥するだけで誰も手に取らず購入する者はいなかった。こういう店舗ではなくスーパーやコンビニやドラッグストアに並ぶ日もそう遠くないはずだ。物議を醸したアベノマスクが届いても筆者は使わない。マスクが足りているからではない。あのちっちゃい昭和の子供の頃着用していたような布マスクを、今や一体誰が必要としているだろう。意地でもアベノマスクを着用している日本の首相と、頑としてマスクをしない米国の大統領が相対的で、なんだか笑っちゃう今日この頃だ。遅きに失した感は否めないし、劣悪品質のアジア製のマスクで回収騒ぎ、しかも費用対効果の最悪な結果を招いているわけで。これにかかる数百億円の税金は医療従事者や火急の危機に直面している人たちに使うべきだった。

久しぶりの渋谷だったけれど、暖簾に腕押しというか糠に釘というか、思った以上の肩透かしを食らった感は否めない。
いつか晴れてスクランブルスクエアの屋上に行けた時はまた、絶景の写真をアップ出来たならいいなと思うのであった。

以上、当世マルコポーロ記者が、現場からお伝えしました。
マイクをスタジオへお返しします。

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